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「だけど殿下、慣れるも慣れないも、オメガだってアルファやベータと同じ人間です。そりゃあ発情期があったり男でも子が為せたりとかなり異なる部分がありますし、それゆえに世間では迫害されているわけですが。でも僕らは、――」  そこから先が続かなかった。  オメガのなかでも恵まれた境遇にいる自分が、さもオメガの代弁者のようなことを言うのは、あまりに傲慢だと思えてならなかった。 「……わかった」 「え……?」 「おまえの言いたいことは、伝わった……と思う」  カシウスは朴訥ながらもそう言ってくれた。  彼は彼なりに誠実であろうとしてくれている。  その気持ちがなによりうれしく思えた。 「ありがとうございます――じゃあついでに僕の不敬な行いにつきましても」 「それとこれとは話が別だ。どさくさにまぎれようったってそうはいかんぞ」 「……チッ」 「まさかとは思うがジェレミー、いま舌打ちしなかったか?」 「そんなまさか。ありえません、世継ぎの君のまえで舌打ちなんて! あ、ちなみにおそらく薄々お気づきでしょうが、オメガのなかでも僕は特殊な例と申しますか」 「薄々ではないな」 「なるほどさすがカシウス殿下、いやはやご明察でございます」 「息をするようにおだててくるんじゃない」 「――と、まぁ自分で言うのもなんですが僕みたいなオメガはなかなかいないと思われますのであまり参考にはならないかと。参考にしたい場合は別料金となりますのでまずは一度ご相談ください。ご愛顧に感謝いたします、こちらクラヴェル商会です」 「ご愛顧した覚えはないが?」 「今後ご愛顧していただけるようになると思います――きっと!」  ばちんと片目をつむってそう答えると、カシウスはついに吹き出した。  いつもどこか肩肘張っているように見える彼が屈託なく笑うのを目にして、ジェレミーも笑い出す。

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