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「あ、あ、赤子ができたらどうするのだ……!」
はっきりいってこのとき、ジェレミーはカシウスが冗談を言っているのだと思った。
あ、この人でも冗談とか言うんだ。とか。
でもいまじゃないよな。とか。
それに雰囲気ってもんがあるでしょ、なんてことを二秒くらいのあいだで思ったのち、まぁ一応ウケとくか相手王子様だしと愛想笑いを浮かべようとして固まった。
どう見てもカシウスの目は真剣そのものだった。
笑い飛ばせるような空気では決してない。
「あ、あの、殿下……?」
「わ、わた、わたしはっ」
「あ、はい」
とりあえず聞いてみる。
カシウスはほとんど半泣きであった。
「わたしはまだ、ひ、人としても、世継ぎとしても未熟であるというのにっ、そんな、赤子の父親だなんて……っ」
その自覚はあったのかと思いつつも、想像以上に初心というか純真無垢なカシウスをまえにしてジェレミーは怒る気はおろか呆れる気持ちすら湧いてはこなかった。
それだけ大事にされてきたということだろう。「大事」のベクトルが些か違うような気がしなくもないが。
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