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92.
いまだ顔も見せてくれない相手に、ジェレミーは詫びの言葉を口にして頭を下げた。
退出しようとしたら、「待て」と声がかかった。
「……昨日の男は誰だ」
「はい?」
唐突にカシウスが訊いてきて、振り返る。
カシウスの顔はまだ枕に埋もれていた。
「昨日、おまえを訪ねてきた男だ。城門まで仲良く歩いていただろう」
っあーー。
はい。はいはい。
なるほどね。
ジェレミーはただちにこの状況を理解し、カシウスに話して聞かせた。
「あれはノーラン・ブロアという男で、故郷での幼馴染ですよ。父親がメールの領主で……そうそう、殿下がメールへ視察に訪れてくださったときにもお会いしているはずですが」
「そんな田舎領主の息子のことなぞ覚えていない」
「まあまあ、そう言わずに……僕の様子を見に来てくれたんです。ここに来てもうひと月以上経ちますし、心配してくれていたみたいで」
そこでようやくカシウスはゴソゴソと起き出し、顔を見せた。
じと、と拗ねたような視線が黒髪のあいだからのぞいている。
要は嫉妬しているのだ、この王子様は。
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