94 / 133
94.
兆候のようなものが前日にあるので、ジェレミーは急ぎヴィドールに伝え、ついでに厨房係のジャンにもさまざま都合をつけてもらった。
『はあ、そりゃもう。こんだけ貰えたら食事と洗い物の世話くらいアタシにおまかせくださいよ』
ジャンがベータであることは確認したが、発情期中のオメガの世話など進んでしたいものでもないだろうと、彼には金貨を渡した。
ジャンはにひひ、と首をすくめて笑い、こそりと付け加える。
『旦那、くれぐれも部屋に鍵をかけるのはお忘れなく。お城んなかっつったっていろんなヤツがいますでな。用心に越したこたぁないですぜ』
その言葉を証明するかのように、ヴィドールはジェレミーの部屋のまえにベータの騎士ふたりをつけさせた。
そこまでしてもらわなくても、とジェレミーは遠慮しようとしたが、「これはカシウス殿下が突破するのを防ぐためだ」と渋面で言われ、素直に従うことにした。
発情期中にカシウスに近付いてこられたら、自分は拒めないどころか自ら招き入れてしまうだろう。それがオメガの、アルファに対する本能である。そうなってしまったらもう自分だけではなく相手も歯止めが効かなくなるだろう。
ともだちにシェアしよう!

