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第五章 105.
第五章
帳簿から目を上げ、ふうとひと息つく。
ペンを置いてぐっと伸びをすれば窓から差し込む夕陽に気が付いた。机に着いたのは昼すぎだったはずが、もう夕暮れどきを迎えようとしている。
机に山と積まれた資料やら計算書やらを片付けていたら扉をノックされた。
「兄さん、父さんがいいワインが手に入ったから一緒にどうかって言ってるけど……」
薄く開けた扉から弟のリュッカが顔を出す。
兄と違って控えめな性格の弟の顔には、気遣わしげな表情が浮かんでいた。
「あー……うん、今日はいいかな。おまえと父さんで飲みな」
「……わかった。じゃあ、兄さんのぶんは残しておくね」
全部飲んでしまっていいんだよ――喉まで出かかった声を飲み込む。
そう伝えると、また弟は心配を重ねるだろう。父に負けず劣らず欲張りで強気な兄の姿しか知らないこの弟は。
ありがとうとだけ伝えると、弟は痛ましさの滲む顔で微笑み、扉を閉めた。
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