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106.
故郷メールに戻ってきて早十日、日々はゆるやかに過ぎてゆく。
連絡もせずにひどく憔悴して帰ってきた息子を見るや、両親は狼狽し、どうした、なにがあったのだと玄関先で騒いだ。けれどジェレミーが黙ったまま金貨の詰まった皮袋を手渡すと、彼らは奥歯を噛みしめ天を仰ぎありったけの理性をかき集めた末なにも言わずにその肩を力強く抱き寄せることによって、息子のやり遂げた仕事を認めてくれたのだった。
その後自室に戻り、そこでようやく涙がこぼれた。
いままで張っていた糸がふつりと切れたのか、一度あふれた涙はとまらなかった。悲しくてくやしくて、声も殺さず泣き暮れた。やっぱり信じてもらえてはいなかったのだと思えば悔やんでも悔やみきれず、けれど、どうしても憎むこともできなかった。
カシウスは純粋で純真で、それゆえに今回のことも耐えられなかったのだろう。
そんな相手を憎むことは、できない。
憎んで、恨んで、罵倒するほうが楽になることはわかっていたけれど、ジェレミーにはできなかった。
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