110 / 133
110.
「またいろんなもんに手を出してるな――これはなんだ? 絹の航路? 絹糸の取引に興味があるのか?」
ダニドはさりげなく机に近付き、そこに積まれている資料を手に取った。
ジェレミーは返事のかわりに肩をすくめてみせる。
「ふむ。絹織物はこれからますます需要が高まるようだしな――いや、あー、ジェレミー。実はその、話があってだな」
商談のときは舌に油でも塗っているのかと思うほど饒舌な父が、不器用に切り出した。
それだけでもうなんの話なのか予測はついた。
「つまり、なんだ……おまえがこの先どうしたいか、という話なんだが」
ジェレミーの思ったとおり、ダニドは息子の将来について話をしにきたようだった。
クラヴェル商会の頭目でもあるダニドはいつになく話しにくそうに続ける。
「なにかやりたいこととか、挑戦してみたいこと――行ってみたい場所でもいいぞ。その、なにかあるか? もしあるのなら遠慮なく言ってみろ。どうだ?」
「うん……ちょっといまは、まだ決まってないかな」
「そうか……うむ、わかった。それでだな、おまえさえよければ、だが……ウジェール国のウルマン氏のことは知っておるな? ……あぁそうだ。先日取引した際に聞いたのだが、あそこの倅 がいま番の相手を探しているらしくてな、東方の商人からおまえのことを知ったそうで……是非一度見合いの席をと頼まれてな」
ともだちにシェアしよう!

