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 ニコラウスが叛乱を起こすほどの理由があるとすれば、それは彼の立場ゆえのことではなかろうか。  世継ぎの男子が長く生まれないからと、王位継承者第一位になるべく婿として王家に迎えられ、わずか二年でその座から追いやられた。その挙句、第一王女の娘婿という名ばかりで空虚な立場に据えられて――アルファだというのにその秀でた能力を活かす場もない。  その上、めでたく生まれた世継ぎの君は周囲から甘やかされて「世間知らずの箱入り王子」などと呼ばれている。彼がどれほどの鬱積を溜め込んでいたか、想像に難くない。  また一方で、城でニコラウスが自分を襲った理由にも合点がいった。  ニコラウスにとって自分は邪魔者だったのだ。  自分のことをカシウスの番候補とでも思っていたのだろうか。オメガはいうまでもなく、アルファにとっても番の存在というのは大きい。仮に番でなくとも、いるのといないのとでは大きく異なるのだろう――カシウスがそうだったように。  カシウスは当初、オメガである自分との接触で情緒不安定に陥っていたが、慣れてくるにつれて目に見えるほどの成長を遂げたとジェレミーは思う。それがニコラウスにとっては不都合だったのだろう。  自身の能力や優位性を正当化するためには、カシウスが「世間知らずの箱入り王子」のままでいてもらわねば困る。だからそれを邪魔するかたちとなった自分を城から追い出そうとしてあのような卑劣な真似をした――そういうわけか。

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