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このまま膠着状態が続けば、退位を拒む国王への脅迫材料としてカシウスの命が差し出される――そんな事態もありうるのでは?
なんとしてでも、そのような事態は避けねばならない。
「ジャン、王城内にもぐり込む方法はないか。カシウス殿下をお助けしなくては」
「これはこれは、また大胆な……しかし殿下は人を見る目も優れていらっしゃったというわけですかなぁ……えぇ、えぇ、そのようなことでしたら、殿下の側近殿が脱出されているそうですから、一度そこへ行かれては?」
「ヴィドール殿が? それで、あのお方はいまどこに?」
「街はずれにある家臣マスカール様のお屋敷に。いまあそこにゃニコラウス卿の奥方の――えぇそうです、カシウス殿下の姉君ルイーゼ妃殿下がご滞在中でしてね。カシウス殿下に味方する者はそこへ集まれとのお触れが出ておりますな」
「なるほど……わかった。じゃあ一旦そこへ行ってみるよ――ジャン」
「へえ、なんでしょう?」
急ぎマスカールの屋敷へ向かおうとしたジェレミーだったが、ふと足をとめて振り返る。
城でも世話になった小男は、隙のない目でちらとこちらを窺っていた。
「おまえ、やけに事情通だな。なんでそんなに知っている?」
「ひひ、いやですよぅ旦那。まえに少し話したでしょう? アタシはこう見えてもむかしは羽振りがよかったってね。そのころのツテだとかなんだとか、まあいろいろですな。城にいればイヤでも耳に入ってくる話もありますし……ま、これですよ、これ」
と、ジャンは片手でもう片方の腕を叩いてみせた。
おもしろい男だ。
思わぬ事情通と知り合えていたのはジェレミーにとってまさに幸運だった。
ジャンの話に従い、それからすぐさまマスカールの屋敷へと向かう。
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