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124.
「そら、ここだ。話はするなよ」
部屋の鍵を開けた門番がそう言って鉄柵の扉を開く。
灯りは通路に沿って点された小さな燭台だけだった。地下の部屋のなかはいっそう暗く、その奥で粗末な寝台に腰かけているカシウスのことも黒い人影としか見えない。
胸の動悸が激しくなって、ワインを持つ手が震えた。
そこにカシウスがいる。もうほんの、あと二、三歩の距離だ。
駆け寄りたい衝動をぐっと押さえつけ、ジェレミーは硬い寝台の端へとワインを置いた。
カシウスはこちらに気づいたようだったが、屈んだ姿勢のまま顔を上げようともしなかった。
――どうか、気づいて……!
一心に祈る。
あの、どこからか呼ばれる感覚はここにきて途絶えていた。
否、近すぎてもう、呼ばれている感覚ではなくなっていた。
五感のすべてが目の前の相手に向かっている――この、カシウスへと。
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