130 / 133
130.
「ジェレミー……ジェレミー、すまなかった……!」
絞り出すような声でカシウスが謝罪の言葉を口にする。
力強く抱き留められた腕のなか、ジェレミーは首を振った。
もう、いい。
そんなこと、もういいのだ。
こうして無事再会できたことがいまはなによりうれしく、ジェレミーの瞳に涙があふれる。
「ニコラウスから聞いた」
「え……?」
その声に顔を上げると、カシウスの表情には後悔と苦悶がくっきりと刻まれていた。
「発情期中のおまえを襲ったのは自分だと……俺に屈辱を与えるために、ヤツはわざわざ俺にそれを打ち明けにきたのだ……ジェレミーすまない。俺はおまえにひどいことを、」
「殿下、もう、いいんです」
「しかし……っ」
なおも言い募ろうとするカシウスに、ジェレミーはここぞとばかりに笑ってみせた。
笑みを浮かべた拍子にぽろりと涙がこぼれる。
眉根を寄せて苦しむカシウスの姿が涙で滲んだ。自分のためにこんなにも心を砕いてくれている彼が愛しくて、そんな彼をこれ以上苦しませたくはなくて、いつものように言葉を返した。
「いいんですよ、本当に。その謝罪込みの、あの金貨の量ってことでしょう?」
「な、おま、……ジェレミー!」
いかにもジェレミーらしい冗談めかした物言いに、カシウスがまいったとばかりに天を仰ぐ。
その仕草が、愛おしくてたまらなかった。
ふたりは同時に吹き出し、またひたと抱き合う。
ともだちにシェアしよう!

