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 彼とて自身の地位に甘んじることなく研鑽を積んでいたということだ。それを思えば苦いものがこみ上げるが、だからといって負けるわけにはいかない。彼の行いは断じて許されるものではなかった。  ――どうか、  ――どうか、カシウス殿下……!  なんと祈ればいいのかわからずに、ジェレミーはひたすらにカシウスの名を心のなかでくりかえし呼び続ける。  ふたりの力量は拮抗していた。  だが、ここまでの道中で何人もの敵を倒してきたカシウスのほうが体力を消耗していた。剣と剣の打ち合いが増えてゆくにつれ、目に見えて劣勢に追い込まれてゆく。  先に膝をついたのは、カシウスだった。 「……っは、貴様はやはり詰めが甘いな!」  くちびるを歪ませ、ニコラウスが吐き捨てる。  双方ともにぜいぜいと肩で息をしていたが、膝をついたカシウスを見下ろし、ニコラウスはとどめを刺さんと鈍く光る剣を振り上げる。  視界の隅で、王と王妃が目を背けるのが見えていた。  悲鳴があがる。 「カシウス殿下――!」  頭で考えるよりも先に、駆け出していた。  ジェレミーは振り下ろされた剣のまえに身体を滑り込ませ、その背にカシウスを庇う。  次の瞬間、ジェレミーの腹に深々と剣が突き刺さった。

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