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終章 141.

 仕立て屋の老紳士は開口一番、「ええ、わたくしはわかっておりましたとも、お客様がいずれ大変な立身出世をお遂げになるであろうことは」と胸を張った。  門前払いをしようとした相手に堂々とそう言うのだからジェレミーも笑うしかなかった。笑って、チップを弾んでやった。  以前頼んでおいた衣装がいまになって役に立つとは、われながら運がいい。頼んだまま受け取らずにいたことさえ都合がよかった。  ジェレミーは、今回のニコラウスの叛乱に際しての働きを大きく評価され、男爵の爵位を賜ることとなった。  たしかにこれは大変な出世である。一代限りとされたにしろ、平民の身から爵位を与えられるまでになるなど滅多にない。故郷メールでは両親や弟が報せを聞きどれほどよろこんだことだろうと思うと、ジェレミーは感に堪えなかった。  なによりもうひとつ、ジェレミーにとって最上のよろこびとなったのは爵位を与えられたことにより、カシウスと番になることを認められたことだった。  あの、ニコラウスとの決戦の直前、自ら血路を切り拓き進むカシウスはこうなることを予測していたのだろうか?  その答えを聞いてみたいとジェレミーは思っていたが、なかなかどうして機会は巡ってこなかった。  とにかく忙しかったのだ。  カシウスは事後処理と各所との折衝に追われ、執務に明け暮れる毎日。王と王妃は今回の叛乱で立派に己が責務を果たした愛息の姿に感涙たえず、一刻も早いカシウスの戴冠を望んでいるとのこと。とはいえこちらはもう少し時間がかかるらしい。

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