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尚孝の場合 - 2
限界いっぱいで久しぶりに会う約束を取り付けた週末。
少しでも早く会いたくて、珍しく外で待ち合わせた。
だって、こんなに和実さんに飢えた状態でどっちかの部屋に行ったら、そのまま襲うってしまうってのは、ものすごく簡単に予想できるじゃないか。
だから和実さんも気に入っている、和実さんの家の近くの定食屋で、早めの夕食。
「よく食うよなぁ……」
「ん?」
「いや、気持ちがいい食いっぷりだな、と」
オレが生姜焼き定食の飯大盛・キャベツ増量を食べている向かいで、呆れたように和実さんは刺身定食の飯抜きとビールに取り組んでる。
アルコールにつきあえない年じゃないけど、オレはまだ飯の方がいい。
それに和実さんにつきあって呑むより、和実さんがジョッキを傾けてるのを見るのが好きだ。
ぐっと腕に力が入るのが、くっきり見えてむらむらする。
料理を楽しむ店なら、ちゃんと食事を楽しむさ。
そんな楽しみは和実さんが教えてくれた。
でも今は、とりあえずしっかり食う。
「ちゃんと食って、後に備えないとね」
「……ほどほどで、頼むわ」
この人の部屋に招かれて、二人きりになったとたん、やっぱり我慢が切れた。
たいして広くはないと和実さんはいうけど、オレの暮らしている学生用ワンルームと違って、ちゃんと仕切りのあるマンション。
リビングに通されて、まず、和実さんを抱きしめた。
「ちょ、待てこら……ん……せめて、シャワー……」
唇に食らいついて、息ごと飲み込む。
オレの背中に手を回していた和実さんが、苦しそうにオレの背をたたいた。
「落ち着け、な。まずは荷物おいて、シャワー行ってこい」
「やだ」
「せめてスーツ脱がせてくれよ」
「離れたくないから、やだ」
「やだってお前ね……」
「だから、一緒に行こう」
「は?」
「オレに洗わせてよ。着替えはいらないよね、どうせ脱ぐんだし」
「え、ちょ、待て! おい、なお? 尚孝? なーお、ひっぱるなこら!」
勝手知ったるなんとやら。
和実さんの上着をはぎ取って、手を引いてバスルームに向かう。
ごめんね、ホントに離れたくないしもう無理。
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