2 / 6

尚孝の場合 - 2

限界いっぱいで久しぶりに会う約束を取り付けた週末。 少しでも早く会いたくて、珍しく外で待ち合わせた。 だって、こんなに和実さんに飢えた状態でどっちかの部屋に行ったら、そのまま襲うってしまうってのは、ものすごく簡単に予想できるじゃないか。 だから和実さんも気に入っている、和実さんの家の近くの定食屋で、早めの夕食。 「よく食うよなぁ……」 「ん?」 「いや、気持ちがいい食いっぷりだな、と」 オレが生姜焼き定食の飯大盛・キャベツ増量を食べている向かいで、呆れたように和実さんは刺身定食の飯抜きとビールに取り組んでる。 アルコールにつきあえない年じゃないけど、オレはまだ飯の方がいい。 それに和実さんにつきあって呑むより、和実さんがジョッキを傾けてるのを見るのが好きだ。 ぐっと腕に力が入るのが、くっきり見えてむらむらする。 料理を楽しむ店なら、ちゃんと食事を楽しむさ。 そんな楽しみは和実さんが教えてくれた。 でも今は、とりあえずしっかり食う。 「ちゃんと食って、後に備えないとね」 「……ほどほどで、頼むわ」 この人の部屋に招かれて、二人きりになったとたん、やっぱり我慢が切れた。 たいして広くはないと和実さんはいうけど、オレの暮らしている学生用ワンルームと違って、ちゃんと仕切りのあるマンション。 リビングに通されて、まず、和実さんを抱きしめた。 「ちょ、待てこら……ん……せめて、シャワー……」 唇に食らいついて、息ごと飲み込む。 オレの背中に手を回していた和実さんが、苦しそうにオレの背をたたいた。 「落ち着け、な。まずは荷物おいて、シャワー行ってこい」 「やだ」 「せめてスーツ脱がせてくれよ」 「離れたくないから、やだ」 「やだってお前ね……」 「だから、一緒に行こう」 「は?」 「オレに洗わせてよ。着替えはいらないよね、どうせ脱ぐんだし」 「え、ちょ、待て! おい、なお? 尚孝? なーお、ひっぱるなこら!」 勝手知ったるなんとやら。 和実さんの上着をはぎ取って、手を引いてバスルームに向かう。 ごめんね、ホントに離れたくないしもう無理。

ともだちにシェアしよう!