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和実の場合 - 1

好みの体だなと、最初には出会った時に思ったんだ。 次に、この大型犬みたいに素直な男を、自分の色に染めたくなった。 ずいぶんと年が離れているのには気が付いていたし、淫行罪すれすれかなって、思わないわけでもなかった。 けれど手に入れたいと思ったのだ。 俺の手で染め変えて、アンアン泣かせたいと。 「それがどうよ……」 結局のところ、アンアン泣いているのは俺の方。 若い時は確かにネコの方が多かったけれど、暗黙の了解というか、まあリードしなよってことなのかもしれないけれど、歳をとるとタチの立場を求められる。 実際の自分の嗜好はともかく、誰かと体を重ねたいと思ったら、需要にこたえないといけないのだ。 そんなわけで俺はネコの方が好きなんだけれど、この十年はタチばっかりで、尚孝と出会った時もそのつもりでいたのだ。 ふたを開ければ尚孝はバリタチで、むしろ老け専だっていうから、顔が緩むくらいうれしかったのを覚えている。 俺を抱き枕よろしく抱え込み、ぽかんと口を開けてあどけない顔で眠る、尚孝のほほを撫でる。 きめの細かい肌と指の表面に引っかかる無精ひげ。 若いよなぁ、と思う。 がっつり飯食って、ガンガン腰振って運動して、健やかに眠る。 健康的に若いんだなあと、感動すら覚えてしまう。 可愛い可愛い、俺の男。 長く交わるのを楽しむとか、そういう手練手管を全然覚えなくて、とにかく俺を抱きたくて仕方ないんだと、全身で訴えてくる。 受け入れれば受け入れたで、力任せ。 さすがに最近でこそ、意識のない俺に突っ込んで好きにするなんてこともなくなったけれど、最初の方はたまにやらかしてくれた。 説教のかいがあるというもの。

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