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第6話

 醜態を晒して二日。俺は軟禁状態から抜け出せてはいない。  吐瀉物を撒き散らした後、メイド達が掃除をし俺を着替えさせたらしい。魔王も……クレースも特に怒ってはいないと聞いて安心した自分もいる。 「鎖がない。」  魔力封じの手枷はそのままだが、鎖が消えていた。武器は半ば諦めた。  「撤去するよう、ご指示がありましたので。」  「ふぅん……」  「どうぞ、本日はこちらをお召ください。」  軍服だろうか。少し小洒落た服を、メイドから渡された。着替えも手伝うのかと思ったが、そんな事は無かったので安心した。  衝立の向こう側で着替えを終えて、窓際の椅子にでも座ろうかと目をやると以前と同じ様な食事の準備がされていた。  「……魔王。」  「クレースと。」  「あぁ、そうだった。」  いい匂いの朝食と、真っ黒な魔王。変な感じだ。絵画にはなりにくいだろう。  カトラリーの音。カトラリーと皿がぶつかる音。この前と違う事と言えば、窓が開かれている事と、遠くから子供の声が聞こえる事。  「子供の声?」  「……あぁ、この城の裏手に村がある。」  「村?」  「今日は、そこへ案内をする。」  「何故?」  「何故……?……君と、話がしたいから。」  この前の醜態が脳内を通り過ぎる。そういえば、そんな事を言っていたな。と思い出しながら、割とのどかな朝食を過ごした。  会話は無い。だが、メイドからも執事からも。クレースからも穏やかな空気を感じるからか、会話が無くとも問題無かった。  朝食が終わり、少しして。クレースが着替えて再び部屋にやって来た。黒いフロックコートを着て、杖を持っていた。その辺にいそうな貴族に見えるが、あの中にこんなのがいたら悪目立ちしそうだ。顔立ちが整いすぎて。  「行こうか。」  「あぁ。」  城を出て、庭を突っ切り城の裏手へ。けもの道とも言えなくもない道を進む。子供達の笑い声が、はっきり聞こえてくる。  「あ!まおーさま!!」  小さい子供達が、魔王の元へと駆け寄ってくる。俺は咄嗟に魔王と子供達の間に入ろうとしてしまったが、いい。と言うクレースの言葉に我に返った。  「やぁ、小さき子供達よ。朝食は済ませたのかな?」  クレースが尋ねると、みんな大きな声で何を食べたのか話し出した。クレースは微笑みを浮かべながら、子供達の話を聞いていた。  一段落した所で、クレースはジェイルはいるか?と子供達に聞いた。  子供達の中の一人が、指を差しながら畑をやっている。と言った。  「では、そちらに。」  「え?あぁ。」  子供達が俺の周りを走り回りながら、名前は何か。どこから来たのか。色々聞いてきた。子供の多さに驚いていたが、中に亜人や魔族の子供がいる事に気が付いた。  「クレース、ここは?」  「作った。」  「村を?なんで?」  「……約束を、守った。」  約束?と聞き返すが、クレースは何も言わなかった。  子供達がジェイルという人物を見つけたのか、畑へと走り始めた。  周りを見渡すと、老若男女人間も亜人も魔族もいた。この子供達の親達だろうが、大人達の俺を見る目は冷ややかだ。  恐らく、クレースといるから危険はないが、警戒はしているのだろう。  「おはようございます、魔王様。」  「やぁ、ジェイル。」  「そちらは?」  「先日来た新しい勇者だ。」  「あぁ。」  周囲を観察していたら、話し声が聞こえた。子供達はそれぞれ別の所へ行ってしまった。 話し声の方に目をやり、驚いた。  「ジェイル……ジェイル・デルタリア?」  「初めまして、勇者様。」  俺の前の勇者だった。

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