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第7話
「へぇ、5年でここまで。ぼくは10年かかったよ。あ、こちら妻のサリアだよ。」
にこやかに話す先代勇者、ジェイル。彼は、俺の国の先代勇者だった。産まれは平民だが、騎士として見習いをしていた。成人の年、最後の適正検査。ジェイルが下級の騎士として働きはじめていた頃に、勇者となった。
サリアさんからお茶を貰い、ジェイルの自宅で話を始める。
「あんたほんとに魔王なのか?」
俺の言葉にジェイルが笑う。どうやらここは、勇者として送り出された以上、生きて帰るか死んで帰るかの二択しかない。それを知った魔王は、ここに町を作り襲い来る勇者や行き場の無い亜人などを匿っていたらしい。
逆に、説得やこの場所を見せても納得をしない奴らは、記憶操作し故郷に帰していたとか。そういう奴らは、恐らく記憶操作されたと分かれば、消されるだろう。消されないとしても、戦争に向かわされるだろう。力は残っているだろうから。そう言ったのは、クレースだった。
「そんな……じゃあ、俺が今まで教わっていた事って……」
「人間は、不思議な事や理解出来ないことが怖いからね。」
「だからって……」
困惑しながら視線を彷徨わせると、教会の様な建物が窓の向こうに見えた。
「あれは……?」
「あぁ、教会だよ。」
月と安寧の男神、青の神の神殿。太陽と豊穣の女神、緑の女神の二柱を奉る教会らしい。さすがに神父はいないが、村の人達で作った二柱の像を置いているらしい。
俺はクレースを見る。
クレースは窓の外を眺めている。思えば、いつも空を。外を見ているな。
そっとジェイルに鑑定をかける。洗脳はない。神の加護が消えているが、自力で取得したであろうスキルは残っている。
ジェイルは言う。魔王を知ってみたらどうかと。
俺は言った。
「考えてみる。」
軟禁部屋に戻された俺は、以降鎖を繋がれる事は本当に無くなった。
魔王城の敷地をを出なければ好きに歩いて良いし、戻ってくるのなら町に行っても良い。とも言われた。だから俺は、毎日町に行き、神に祈っていた。
伽藍堂の教会は、壁を厚く作ったのか窓から聞こえる子供達の声が小さく聞こえる位だった。
町の人々が手入れをしているらしく、埃も無い。ぼんやり教会内の椅子に座って、手作りの神像を眺めたり、たまにやって来る子供達に読み聞かせしたり遊んだり過ごしていた。
朝昼晩と、必ずクレースと食事をした。会話はあったり、なかったり。あったとしたら、本の話が多かった。俺も本は嫌いではないから、分かる本の話は楽しく話せた。
興味があるなら。と本を借りたりもした。
色々な本を読んだ。魔法について、戦略について。小説の類も幅広く集めていたのか、こちらも借りた。
印象に残ったのは、読み聞かせしていた絵本について。
「あぁ、あれは魔族の特徴を無くせる者や、町の皆に集めてもらったものだ。それを、子供達に分かりやすいように作り直したものを教会に置いている。」
クレースはそう説明した。その内容を考えるのが、クレースや執事のセディと言うから驚いた。
実際、読み聞かせをしていて分かったのは俺の故郷である国や、他国の成り立ち。果ては教会に祀られている二柱の神話。そんなものまで置いてあったからだ。
とても、分かりやすく面白かった。
「魔族の子であろうと、子供は子供だ。勧善懲悪が好きなのだろう。」
味のしない飯を無表情で食べながら、そんな事を言う。他国もこんな王なら戦争なんぞ、起きないだろうなんて世迷言が脳裏を過ぎった。
そんな日常を過ごしていて、他にも色々分かった事がある。
どうも、あの町にいる人間は、他国から逃れて来た人々らしい。戦争に巻き込まれ、逃げて、ここにやってきた。
また、ここにいるメイド達。魔族と人間の子というのが、ちらほらいた。そういう子供は、どこかしらに魔族の特徴がある。とクレースに聞いた。
日中のクレースについて。絵本の文を考えるのはもちろん、公務もしていた。木を伐採し、畑を作る範囲を決めたり。ここまでなら干渉はされないだろうと調べた場所に、結界を張ったり。
俺は思った。
なんだ。俺達と何ら変わりないじゃないか。とーーー
だから俺は、決めた。クレースと、話す事を。
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