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第13話
夢を見た。
あの二柱の神がいた。
二人は俺に生温かい微笑みと共に、よくやった。と言われ、親指を立てていた。
あれは何の意味なんだろう。
目が覚めた。
体が重い。魔力も半分は無い。このまま二度寝でもしようかと思ったが、ぬっと横から木の盆が差し出された。
カユだ。
見上げればコックがしかめっ面で俺を見ている。くぐもった声が聞こえた。下の方から。
声の方に軋む体を動かし見やると、クレースがコックに踏み付けられていた。
「えぇと……?」
そっと近くに控えていたセディに目をやる。眉間に皺を寄せているので、恐らく接客からのこれなのだろう。
「ヤポネの一番の謝罪。土下座。」
あ、これ謝ってんのか。
そう思い、再び踏み付けられているクレースを見る。
「無茶をさせた。申し訳なかった。」
くぐもってはいるが、そう聞こえた。
俺は足をどけて良いとスザクに伝え、クレースを立たせる。心底申し訳ないという表情で、クレース自身の足元を見ていた。
「良いよ。俺も悪かったな。変な煽り方をした。」
それにしても、正直あそこまでとは思わなかったが。まさか、気絶するまでイカされるとも思わなかったし、 そもそも、クレースにキスをされて俺は顔が熱くなるとも思ってもみなかった。
「セディ、許しを貰えた。」
「えぇ、そうですね。そうですが、加減を覚えてください。」
「あいわかった。」
そこも理解し合えて何よりだ。
俺は立ち上がろうとしたが、腰に力が入ら無いのを自覚した。大人しくベッドの上でカユを食べようと盆を受け取ろうとしたが、またもやクレースに奪われた。
「今日は、一日傍にいる。」
無表情だ。
だが、俺は知ってしまった。最中のあの獰猛な顔。肉を食い、微笑む壮絶な顔。
腹の奥が、ぎゅっと掴まれた感覚がしたが気にしない事にする。
「ありがとう。」
「……良いんだ。」
熱を出した時同様、クレースが俺にカユを差し出すので口に入れた。
この前よりかは、コメとかいう穀物の食感がある。煮る時間で食感が変わると、スザクが言った。
「へぇ、俺にもこれ作れるか?」
「出来る。勇者、作るか?」
「あぁ。クエストとかで長期になると、こういう温かい物が重宝するんだ。」
スザクは頷く。ヤポネからここに来るまで、少量のコメしかなくカユにしてふやかして食べながら移動をしてきたらしい。
凄いな、コメ。
聞けば乾燥したコメであれば、湿気に気を付ければ半年程は保存出来るとか。ますます良いな、コメ。
「勇者、食欲あるか?」
「あるぞ。」
「おにぎり食べろ。作ってくる。」
ずっしりとした足音と共にスザクが立ち去る。沈黙がおりる中、クレースは俺の口元に淡々とカユを運んでくる。
セディは部屋の隅に控え、カイルは俺の着替えを準備する。確かに、少し寝間着が汗を吸い込んでいる。
カユを食べていると、スザクが戻って来た。
「食え。」
三角形で、見覚えのある粒。これがコメかと聞けば、そうだと返ってきた。これが炊いた状態で、カユはこれを湯やスープで煮るらしい。
これがオニギリ。手で持って食べるとかで、クレースはお役御免になった。良かった。あまり考えないようにはしていたが、一国の王が看病って少々状況がおかしいだろ。
オニギリは手に持ってもほんのり温かい程度。噛めばもちもちとした食感と、程よい塩味。
「美味い。噛んでると甘いんだな。」
スザクがにっと笑う。
「そうだ。勇者分かるやつ。」
がしがしと頭を撫でられたというか、捏ねくり回されるというか。
「アレク様、それを食べ終わりましたら着替えましょうね。」
「あぁ、ありがとうカイル。」
ベッド上の俺を中心に、ほのぼのとした時間が過ぎた。
クレースは本当に一日傍にいるつもりらしく、書類を取りに行き戻ってきては何かを書きつけ、またどこかへ行くと言うのを繰り返している。
「今日は何やってんだ?」
俺が聞けば、クレースは変な顔をした。俺の故郷とは別の国から、勇者がやって来たらしい。
これがまた厄介らしく、女勇者であり、今の所魔王軍は全滅らしく、クレースが出る事になったとか。
俺の時もそうだったのかと聞けば、違うと答えた。
「君は特例だ。」
全力でやり合う中で、甘い香りがしたそうだ。それがどこから来ているのか、戦闘の中同胞の血に混ざって香ってきたので俺のものだと分かったそうだ。
「そこで、ケーキだと知った。」
「なるほど。」
つと、俺に視線を向けるクレース。何を言うのかと待つ。
「運命とは、この事かと思った。」
どうにかして手中に納めたい。そう思ったとか。
いや、初めから狙われてたのか俺は。
「あー……良かったな?」
「あぁ、良かった。」
普通に返事をされてしまった。
「では、行ってくる。」
「あ、待て待て。俺に良い考えがある。」
クレースが俺の言葉に首を傾げた。
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