3 / 4

第3話 (長谷視点)

酔っぱらってぐでんぐでんになっている有を見下ろして、俺はほくそ笑む。 エレベーター前でぶつかった時から、有をロックオンしていた。 色白の肌は透けるように薄くて、黒々とした癖のない髪が良く似合う。 瞑った目を囲む睫毛もよく見ると長くて、華麗に上向きにカールしている。 顔のパーツこそ慎ましやかだけれど、それすらも長谷には好ましく思えた。 今日ばかりは自分のアルコール耐性に感謝した。 普段は全然酔えなくて、会社での飲み会や合コンなんかでやけに冷静になってしまい、歳甲斐もなく酔っ払い、羽目を外している人間を見ると辟易してしまうのだ。 普段は白く眩しい肌が、今はピンク色になっていてそれはそれで愛らしい。 「有さーん、そろそろ移動しよう?」 そう呼び掛けて剥き出しのうなじを撫でると 「んふ、くすぐった」と彼は身を捩った。 可愛い。 はやく食いたい。 欲望に支配された俺は、有を連れて、呼びつけたタクシーに乗り込んだ。 ぐでぐでの有は俺に体を預けて、すよすよと寝息を立てている。 「有さん、起きて」 「ん、んん…」 ずっとこんな感じで生返事が返ってくる。 普段は話しかけると、これでもかってくらい身を固くして警戒しているのに。 そんなところが野良猫みたいで可愛いんだけれども。 こうやって身を預けてくる有は、俺の理性をぶち壊してしまう。 自宅に彼を連れ込み、ベッドに寝かす。 俺には一つ確認しなくてはならないことがある。 「有さん、スマホのパスワード教えて?」 うつぶせで眠る彼の肩を揺らす。 「んぇ?なんでぇ?」 「なんでも」 「うーん、パス、パスワード…、884884」 俺は半信半疑でその数字を打ち込む。 すると、彼のスマホはホーム画面へ切り替わった。 まさか…、中林のばやし(884)の部分? 笑いそうになるのを堪えて、インスタのアプリを開く。 「やっぱり…」 彼のアカウントは”中林”という初期設定のアイコンだった。 最近、俺のストーリーを閲覧しているフォロー外のアカウントだ。 普段なら、フォロー外のアカウントから閲覧されていても特段気にしない。 でも、名前が”中林”だったから気になった。 そんな苗字の人は珍しいし、もしかして有なのかな?と思った。 でも、普段話しかけてもSNSの話は一切しないし、まさか有のような人が本名でSNSをするとは思えなかったからだ。 でも、もし本当に有だったとしたら…、それって俺の事が気になってるってことだよな? 押せば落ちるってことだよな?と思うと、確認せずにはいられなかった。 有から警戒心は感じても、嫌悪感は感じなかった。 まあ、2人きりになろうとすると若干渋っているようには感じたけれど。 俺の事が好きでネトストしちゃう有…、なんて可愛いんだ。 俺はうっとりと寝そべる有の寝顔を眺める。 安心しきった顔をしていて、本当に愛らしい。 悪戯心が湧き、彼の写真のフォルダを開く。 なんか揺すれるような画像は保存されていないだろうか? 最近の有が保存した画像は、すべて俺のストーリーのスクショだった。 こんなに俺の事が好きなのに、全然態度に出さない有がいじらしい。 俺は彼のスマホを机に置くと、ベッドに近づき、彼の頬に唇を当てる。 「んえ?」と間抜けな声を出す彼に、俺のムラつきは最高潮に達した。 今すぐ食いたい。

ともだちにシェアしよう!