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第3話 (長谷視点)
酔っぱらってぐでんぐでんになっている有を見下ろして、俺はほくそ笑む。
エレベーター前でぶつかった時から、有をロックオンしていた。
色白の肌は透けるように薄くて、黒々とした癖のない髪が良く似合う。
瞑った目を囲む睫毛もよく見ると長くて、華麗に上向きにカールしている。
顔のパーツこそ慎ましやかだけれど、それすらも長谷には好ましく思えた。
今日ばかりは自分のアルコール耐性に感謝した。
普段は全然酔えなくて、会社での飲み会や合コンなんかでやけに冷静になってしまい、歳甲斐もなく酔っ払い、羽目を外している人間を見ると辟易してしまうのだ。
普段は白く眩しい肌が、今はピンク色になっていてそれはそれで愛らしい。
「有さーん、そろそろ移動しよう?」
そう呼び掛けて剥き出しのうなじを撫でると
「んふ、くすぐった」と彼は身を捩った。
可愛い。
はやく食いたい。
欲望に支配された俺は、有を連れて、呼びつけたタクシーに乗り込んだ。
ぐでぐでの有は俺に体を預けて、すよすよと寝息を立てている。
「有さん、起きて」
「ん、んん…」
ずっとこんな感じで生返事が返ってくる。
普段は話しかけると、これでもかってくらい身を固くして警戒しているのに。
そんなところが野良猫みたいで可愛いんだけれども。
こうやって身を預けてくる有は、俺の理性をぶち壊してしまう。
自宅に彼を連れ込み、ベッドに寝かす。
俺には一つ確認しなくてはならないことがある。
「有さん、スマホのパスワード教えて?」
うつぶせで眠る彼の肩を揺らす。
「んぇ?なんでぇ?」
「なんでも」
「うーん、パス、パスワード…、884884」
俺は半信半疑でその数字を打ち込む。
すると、彼のスマホはホーム画面へ切り替わった。
まさか…、中林のばやし(884)の部分?
笑いそうになるのを堪えて、インスタのアプリを開く。
「やっぱり…」
彼のアカウントは”中林”という初期設定のアイコンだった。
最近、俺のストーリーを閲覧しているフォロー外のアカウントだ。
普段なら、フォロー外のアカウントから閲覧されていても特段気にしない。
でも、名前が”中林”だったから気になった。
そんな苗字の人は珍しいし、もしかして有なのかな?と思った。
でも、普段話しかけてもSNSの話は一切しないし、まさか有のような人が本名でSNSをするとは思えなかったからだ。
でも、もし本当に有だったとしたら…、それって俺の事が気になってるってことだよな?
押せば落ちるってことだよな?と思うと、確認せずにはいられなかった。
有から警戒心は感じても、嫌悪感は感じなかった。
まあ、2人きりになろうとすると若干渋っているようには感じたけれど。
俺の事が好きでネトストしちゃう有…、なんて可愛いんだ。
俺はうっとりと寝そべる有の寝顔を眺める。
安心しきった顔をしていて、本当に愛らしい。
悪戯心が湧き、彼の写真のフォルダを開く。
なんか揺すれるような画像は保存されていないだろうか?
最近の有が保存した画像は、すべて俺のストーリーのスクショだった。
こんなに俺の事が好きなのに、全然態度に出さない有がいじらしい。
俺は彼のスマホを机に置くと、ベッドに近づき、彼の頬に唇を当てる。
「んえ?」と間抜けな声を出す彼に、俺のムラつきは最高潮に達した。
今すぐ食いたい。
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