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第5話

 並木と俺は、同じ写真の中でも違う人物を見て驚いてた。 「由夏…やっぱり大崎君のこと好きやってんや」  待て待て、お前何言うてんねん。振ったのは由夏やぞ。 「あんたらが別れた後な、由夏から一回連絡があって…別れたことちょっと後悔してる、って言ってやってん」  だから、何やねん。東京に来てって呼び出して、で、数分で、健ちゃんとは無理みたい、って言うたやろ。 「由夏な、大崎君に別れたいって言ったら、大崎君から、わかった、しゃあないな、ってあっさり言われたことがショックやってんて」 「…なぁ、それって勝手過ぎひんか?」 「女って、そんなもんやねん!…あの時な、そんなん言わんと考え直してくれ、って何で言ってあげへんかったん?」 「あんな、俺はそんなまどろっこしいの嫌いなん知ってるやろ。別れ話しせなあかん気持ちになってたんやったら、何でそうなったかを言うべきやろ…それにもう一年以上の前の話しや」  並木は、ごめん、って、自分の机に戻りよった。  そうや、あの時、喫茶店で唯斗も同じようなこと言うてたな。相手の彼氏の気持ちを確かめるために別れ話を持ちかけたって…  そんなんしても何にもなれへん。相手の気持ちなんて結局のとこわからんことばっかりや…気持ちを確かめるとか、振り向かせるとか、そんなんしたりするより、自分の気持ちを素直に伝える方がええやろ…自分が好きやったら『好き』って伝えるのが正解やで……  …うん?待てよ。喫茶店で話してた時、確か唯斗は、自分はゲイや、って言うて、それで俺は誰を好きになってもいいやん、みたいなこと言うたよな…その後、俺はLGBTQとSDGsを間違うて、唯斗に爆笑されたんやった。そうや、思い出したわ。  唯斗に、誰を好きになってもいいやん、って言うといて、いざ、自分が、好き、って言われたら、チンコの話しして、ごめん、って…  唯斗は…ただ『好き』って、素直に気持ちを伝えてくれただけやのに。  俺は言うてることとやってることが違ってるやろ…どうやねん、大崎健吾!    やけど…試合観に行かれへんって何で嘘言わなあかんねん?それで、ほんまは行ってんのに何で行ってへんて言わなあかんねん?  唯斗……教えてくれや。  疑問符だらけの頭で、専務の写真は見つけた。開幕戦に奥さんとたぶん息子さんと観戦に来てくれてて、笑顔で写ってる写真を見つけた。開幕戦のファイルから探してたらすぐに見つかったんやろうけど、たまたま最後の試合のファイルを開けたばっかりに…何かが俺に示唆してるんやろか。 ◇◇◇    昼休憩。  俺は社食で一人でいつもの定食を食べてたら声をかけられた。俺より先に引退したラグビー部の先輩や。同じ釜の飯を食べた仲間やから気軽に声をかけてくれる。 「なんや、渋い顔して。どないしたんや?」 「ああ…お疲れっす。たまには俺も渋い顔くらいしますよ」 「珍しいやん。いかにも悩んでますって顔してたけど…女の悩みか?」  仕事では頼りになる先輩やねんけどな…それ以外は大概、話の的が外れてる。 「そうや…お前、モデルと付き合うてるって言うとったな…それか?」  何で、今日は由夏のことばっかり言われるんや。 「いつの話しですか?…その子とはもうとっくに終わってますって」 「ほしたら、次の子か?」  恋バナに飢えてんのかいな…。  でも、まぁ一応、訊いてみよか。 「あの…先輩が嘘つく時って、どんな時です?」 「悪いな。俺は今まで嘘ついたことあれへんから、答えられへんわ」  はい、嘘。やっぱり話す相手間違うたな。 「おい、コラ。そこはツッコミ入れるとこやろ。何、呆れた顔してんねん」  面倒くさ…。 「マジな話しなんか?…まぁ、自分の為につく嘘やったら、悪事がバレへんようにやな」  試合を観るのは悪事ちゃうやんな。 「相手の為に嘘つくとしたら、その相手が傷付かんように、かなぁ…まぁ、嘘も方便ってやつやな」  試合観るだけやし、誰も傷付けへんぞ。 「そうですよね…人の気持ち、って、ようわかりませんわ」 「お前らしないな…あれこれ悩むより会うて訊く方が手っ取り早いで。脳みそ筋肉のお前は、悩むな」    そや……何で悩んでんねん。会いに行こ。    今日、仕事終わったら、新幹線乗って東京に行こ。唯斗に会うて、ごめんとありがとうを言うんや。それで、試合観戦のこと訊いてみよ。  先輩、ありがとう。声かけてくれて。 「なぁ…大崎。お前まさか、不倫してへんよな…?」  やっぱり、先輩は的外れやわ。

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