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第3話 佐久間の実家

 百貨店に寄ると、颯太は食料品売り場をキョロキョロしていたが、 結局アイスクリームのセットと果物に決めた。 今日は日曜日だから、それなりに混んでいる。 買い物は百貨店が多い。 理由は、SPの車が常に2台いるからだ。 小さな店だと1台は道路に停めることになり、 もう1台は警備会社の近い待機所に移動する。 1台だけは常にエンジンをかけっぱなしで待機。 危険があった時にすぐ発車できるようにするためらしい。 迷惑な話だが、百貨店は慣れたものだ。 要人でもないと思うが、 警備会社によると「1.2兆円企業の当主には必要な措置」だそうだ。 ……そうですか。 買い物が終わると実家に向かった。 今日の昼食はピザを取ることになっている。 実家の入り口から入って左の敷地に、 俺が建てた小さな家がある。 外の道路に面していて、玄関もそちら側に作り、 将来の賃貸に対応できるようにした。 しかしSPから物言いがつき、 その門は板で閉鎖された。 出入り口が2つあると警備上問題が出るらしい。 入り口から入って右側にはガレージがあり、 家族の車が3台停まっている。 その横にSP用の待機所を作った。 SPの車も1台駐車しているし、24時間警備なので、 四畳半ほどの小さな部屋だが、トイレや水回りを整えた。 ソファや机、コンセント、ポット、電子レンジ、冷蔵庫も置いてある。 これも必要経費。 颯太の信託預金から出ている。 安全に関するものは必要経費として認める—— 前会長の遺言だ。 「先生、早く冷凍庫に入れないと溶けちゃう」 「よし、行こう」 実家に入ると、みんな待っていた。 「わ〜何くれたの?」 楓がアイスクリームや果物を覗き込んでいる。 「あのね、百貨店であちこち覗いていたんだけど、 これがすごく美味しそうだったの」 颯太の説明を、両親が微笑みながら見つめていた。 そこへウーバーイーツが届いた。 ピザやドリンク、サイドメニューもたくさんある。 とりあえず、みんなで乾杯だ。 「カンパーイ」 俺も颯太もコーラにした。 「兄さん、今日は引っ越しの話で来てくれたんだろう?」 「待ちかねた?」 ちょっとクスクス笑った。じれてるな。 「来週の土曜日に引っ越すよ。 だから三上家の皆さんには、日曜日には見てもらえるよ」 「そう?良かった〜。もうあっちのお母さんから矢の催促なんだよ〜」 「なんかさ、三上母がほとんどリフォームしたいらしいよ」 と楓。 ふっと笑った。 名前が“三上母”になってる。面白い。 「いいさ、好きなように変えていいよ」 「う〜ん、でも勿体ない気がするわねえ。 だって陽一だって新築で買って、まだそんなに経ってないものね」 と母。 「いいんだよ。気が済むようにしてもらって」 「兄さん、悪いねえ〜、よろしくね」 そこに父が冷静なことを言った。 「どうせあちらのお母さんも、 紀子さんの嫁入り道具の一つだと思ってるんじゃないの?」 鋭いなあ、さすがだよ。 「えへへへ、どうもそうらしいんだよね。 全部三上家が払うらしいよ。 俺、何も言われてないもん」 「まあ、良かったじゃない。 ピカピカにしてもらえるんだからさ」 「颯太、しっかり食べなさい。 最近は身体の調子はどうなんだ?」 「はい、お父さん。大丈夫です。 大学の3年になってからは、すごく元気になりました」 「そうだよね。疲れすぎないように気を付けてるから、いいみたいだよ」 俺もそれは自信がある。 いつも身近で見てるからさ。

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