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第13話 浅田タワーへ訪問

SPが「隣のタワーに行くのにも車に乗ってください」と言う。 ……まあ、工事中だし仕方ないか。 結局、SPの車は1台だけ停めてもらえることになった。 こういう“ちょっとした不便さ”も、ちゃんと伝えておかないとね。 入口から電話すると、北原院長と浅田夏輝さんが迎えに来てくれた。 「いやあ、わざわざすみませんねえ」 と、北原院長は相変わらず恐縮している。 執事の小林さんを紹介して、 白いパネルが続く通路を抜けてホテルフロアへ向かった。 ホテルフロアは、ほとんど完成しているように見えた。 壁もドアも美しくて、 ミツワのホテルより絨毯がふかふかだ。 突き当たりの角部屋が北原さんのお宅らしい。 ドアが開くと、奥さんの莉子さんが迎えてくれた。 相変わらず可愛い。 手土産の焼き菓子をお渡しする。 中に入ると、浅田社長さんも待っていてくださった。 わー……貫禄がある。本当に“経営者”って感じだ。 初対面なので名刺を交換してご挨拶。 小林さんを紹介すると、社長さんが「ほう〜」と目を丸くした。 執事なんて、今どき珍しいもんね(笑) 部屋は広くて豪華で、 インテリア雑誌に出てくるような完璧な調度品。 颯太がびびっていた。 大きな窓からの眺望も素晴らしい。 ……うちのミツワの建物が隣にあるのだけ、ちょっと邪魔だけど。 さすがに口には出さない。 小林さんも笑顔でぐるっと見渡していた。 「さあ、どうぞ、おかけください」 莉子さんがコーヒーを出してくださる。 俺は資料を出し、小林さんも持ってきた資料を広げた。 「あのう、こちらが警備会社の資料です。 よろしければコピーをお持ちしましたので」 「うわ〜、すみませんねえ」 浅田社長さんが資料を手に取って眺める。 北原院長が小林さんに尋ねた。 「執事はいつからなさっているのですか?」 「そうですね。私は母一人子一人で、 母が立花家で家政婦をしていたんです。 前会長が子どもの私をかわいがってくださって、 大学まで出していただきました。 それで卒業後すぐ執事になり、今に至ります」 「ほう〜、そうなんですか。ご縁ですねえ」 と社長さん。 小林さんが続けた。 「セキュリティについてですが、 今の家が立花家の本家になります。 区画が広いので、夜間は目が届きません。 庭には赤外線を通してあり、動きがあると警報が鳴り、 庭全体の明かりがついて、警備会社にも通報されます。 ただ、到着までは10分ほどかかりますね。 今のところ侵入はありません。 出入り口や窓には監視カメラがあり、 自宅にはSPの待機所もあって、数人が常駐しています。 全体的にかなり安全です」 「ああ、そうなんですねえ……いやあ、大変ですねえ……」 社長さんは慣れない様子で、どうしたものかという表情。 そこで浅田夏輝さんが質問した。 「失礼ですが、颯太さんの警備には どれくらいかかっているのですか?」 颯太が俺を見る。 「大体、年間で1億くらいです。 先導車にSPが2名(ドライバー含む)。 2台目もドライバーとSP。 後部座席は2名が限度です。 それ以上だと警備しにくいと言われます」

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