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第14話 浅田タワーへ訪問・2
小林さんが、淡々と“日常の警備”について話し始めた。
「まず、よく行く場所や、一緒に乗る人は事前に報告します。
本部が逃走ルートをいくつか調べておくんです。
SPは時間で交替して、基本24時間体制ですね」
「へえ〜」と声が上がる。
「実家にはSP用の休憩所も作りました。四畳半くらいですが、水回り付きです」
「ええーー?」
莉子さんが素直に驚く。
小林さんは続ける。
「移動は基本2台。
停める場所がなければ1台だけにして、もう1台は近くで待機します。
その車は常にエンジンをかけっぱなしです。
だから出かける時は本部に連絡しますが、突然でも対応してくれます。
遠方は別料金ですね」
「ヘリも使えるんですか?」と夏輝さん。
「前会長はよく利用されていました。
ヘリのプランも警備会社にありますよ」
「父さん、うちの屋上ってヘリポートあるの?」
「うん、あるよ」
「へえ〜知らなかったー!」
みんなで声を揃えて笑った。
小林さんは、買い物の話に移った。
「買い物は、自由がないんですよ。
SPが慣れている場所に行くようになります。
一番は百貨店。
次にインターナショナルマーケット、公園そばのカフェやレストラン。
車を停めやすい場所ですね」
「確かに紗奈ちゃんたちも1台ずつ乗ってたよね」と莉子さん。
「はい。姉妹でも分かれて乗るのがリスク分散だそうです」
「大変だなあ」と夏輝さん。
「慣れますよ。
向こうがこちらを見てくれているので、気にしなくていいんです」
小林さんは、レストランでの“あるある”も話した。
「お店のスタッフが案内してくれるんですが、無駄なんです。
先にSPが客席に入り、“ここでお願いします”って決めるので。
慣れたお店だとスムーズですよ」
「へえ〜気を使うなあ」と北原院長。
「一度行けば、二回目からはお店も慣れますよ」
小林さんは、最後に“荷物問題”を説明した。
「大事なのは、荷物をたくさん持たないこと。
逃げられないからダメなんです。
SPは荷物を持ちませんので、買い物はほとんど届けてもらいます。
百貨店は外商で。
ケーキのようなものだけ手で持ちます。
少しならOKです」
「もう無理っぽいわあ……どうしよう?」
莉子さんが悲鳴を上げ、みんなで笑った。
「大丈夫ですよ。運転しなくていいし、どこでも連れて行ってくれます。
荷物も車の後ろに置けばいいんです」
「そうだね、莉子。安全に一人で出かけられるよ」
北原院長が優しく言う。
「まあ……そう言えばそうだけどねえ」
社長さんがまとめるように言った。
「まあ、皆で慣れましょう。しょうがないですよ。いいですか?」
「はい」と声が揃う。
その時、夏輝さんが思い出したように言った。
「そうだ。もうすぐ夕飯なので、菜の花弁当をご用意したんです。
よかったらご一緒にどうですか?」
「ええ?」
俺と颯太、小林さんで顔を見合わせる。
颯太がにこっと頷いた。
「いいんですか?」
「はい、ぜひ」
「では、喜んでいただきます。
実は紗奈たちの話を聞いて、菜の花弁当に憧れていたんですよ」
大笑いになった。
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