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第17話 夫夫の脱出計画

プライバシーの無さは、 だんだん大きくなって気が重くなった。 そこで “幸せの黄色いハンカチ” を目印にした。 母屋のリビングから見えるんだけど、 うちの小さな出窓に黄色いカフェカーテンをつけた。 普段は端っこに寄せて止めておく。 「悪いけどさ、黄色いカフェカーテンは、 “お幸せ中だから邪魔しないで” の意味だからね」 家族にそう言ったら、シラーっと冷たい目で見られるし、 颯太が真っ赤になってしまった。 「陽一がそんなことを言うとはなあ……。 颯太も身体が弱いんだから、ほどほどにしろよ」 父に言われてしまった。 「兄さんも生々しいわねえ〜。ショックだわ」 と横を向く楓。 結婚すれば楓が一番実感するさ。 なんせ同居だもんな。気の毒に……。 しかし、背に腹は代えられない。 「兄さんもラブラブなんだねえ〜」 と淳一に言われた。 フン、もうすぐお前だって分かるさ。 どんどん邪魔してやる。 いや〜、それにしてもあのマンションは惜しかったなあ……。 そうだ! どこかに遊び用の場所を作ろうか? よし、決めた! 実家の横じゃ盛り上がらない。 「颯太、俺さあ、実家のそばだとなんだかリラックスできないんだよ。 どこかに遊び用の住まいを持とうと思うんだけど、どう思う?」 「うん、いいよ。俺は海のそばが良いなあ〜。 あ!待って。多分ね、うちの物件できっとあるよ。 上川さんに聞いてみるね」 すぐメールしてくれた。 「あのね、調べてから返事するって。 財産管理会社に任せてるから、 貸し物件で空いてるところか、 会員制のホテルか、なんか見つかると思うって言ってたよ」 ああ〜、感動の打ち出の小槌! 「そうなのか? 愛してるよ! 颯太」 抱きしめてキスの雨を降らした。 「うふふふ、もう〜苦しいよぉ……」 嬉しそうにはにかんでいた。 それとは別に、実家とうちにインターホンを取り付けてもらった。 2階からでも取れるやつ。 予想外に黄色いカフェカーテンが不評だった。 全く、近すぎるんだよ。 これは住まいを変えないと、 ゆっくり颯太を可愛がることもできない。 そして、10分もしないうちに返事が来た。 「先生、なんかいっぱいあって、選べるんだって。 どこがいいですか?って聞かれてるよ」 「よし、ちょっと待て。 そのメールを俺のパソコンに送って、調べるから」 そして、もらったファイルを一軒ずつ調べた。 「先生、あまり遠いと時間がかかっちゃうね」 「うん、近場でいいよ。 これ、2軒くらい使ってもいいのかあ?」 「うん。いいよ。だって全部俺のだから」 笑いが止まらない。 でも掃除が嫌だな。 空調がいつも入っていないと湿気やカビで遊べない。 ――ということは、マンションか会員制ホテルだな。 「ね、颯太、これどう? 箱根の仙石原の会員制リゾートホテル。 掃除も食事もOKだよ」 「うん、いいよ。でも海のそばも良くない?」 そして葉山で見つけた。 「颯太、葉山の会員制のリゾートホテルはどう?」 「うん、海が見えるしね。そこも良いね」 「そしたら……両方とも頼んじゃってもいいかなあ?」 欲だらけになった俺。 「うん、いいよ。すぐメールするね」 それで、すぐ上川さんにメールしてくれていた。 ああ〜幸せ。こんなに簡単に手に入るんだ。 俺、バチが当たらないか? いや、待てよ。 警備会社に言わないといけない。 SPの宿はどうするんだろう? いっそ二部屋取らないといけないかもだな。 「颯太、もしかしたら、SP用に部屋がいると思うよ」 「あ、そうだね。それも聞いてみるよ」 あ、そうか! リゾート地の散歩も、SPの男二人を連れて歩くのか? うわ〜、くっつきながら歩けないんだ。 よし、それでもいい。 こうなったら遠方料金を取られてもかまわない。 金曜の夜から出かけてやる。

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