21 / 34
第21話 続・菜の花病院・見学
「よろしかったら、ドリンクバーがあるので、いかがですか?
うちは各所に置いてるんですよ」
父が「あっ……」という感じで、口を半分開けたまま驚いていた。
その休憩室にはグループらしき数人がいて、
カメラやパソコンをいじっていた。
「あ、本居君、ちょっと来てくれる?」
院長が呼ぶと、愛想の良い男性がニコニコしてやってきた。
「彼はね、放射線技師なんですけど、
写真クラブのリーダーなんですよ」
「初めまして。本居と言います。よろしくお願いします」
「今日はね、青山の佐久間総合病院の皆さんが、
見学に見えたんですよ」
「ああ、そうなんですか。どうぞごゆっくり。
うちの病院は面白い所ですよ〜」
「こら」
院長が言うから、皆クスクス笑っていた。
「今日は荷物持ち隊はいないの?」
「そうなんですよ。
赤坂クリニックで忙しいみたいですよ」
「そうなんだ。ありがとう。
では7階にご案内しますね」
7階に行くとシーンとしていたが、
手前のブースだけは、
にぎやかな女性たちの話し声が聞こえた。
院長がノックすると、ドアが開いた。
「あら? お疲れ様です」
「今日はね、佐久間総合病院の皆さんが見学に見えたんですよ」
すると皆さんが一列になってかしこまった。
「ではご紹介しますね。左から山科副院長、
次は宮本看護部長、次は川瀬副部長です」
こちらも一通り紹介してご挨拶をした。
俺が「わー、いいですねえ。
副院長さんが女性なんですね。
うらやましいですねえ〜」と言ったので、
どっと皆さんが笑った。
「いいでしょう?」と院長。
「すごいと思いませんか? 私ナースなんですよ」
と副院長が言うので、
「ええー!」と全員絶句した。
「すごいです。素晴らしいですねえ。
うわ〜うらやましいですね。見習いたいですよ」
俺はもう感心しきりだ。
「理事、聞いてくれましたか?」
と父に言った。父はへへら笑ってごまかした。
「あ、ちなみに荷物持ち隊のリーダーが副院長と副部長です」
「は?すみません、どういう意味でしょうか?」
俺はさっきから分からなかったんだよ」
「もう~いやだ~、院長それ話したんですか?恥ずかしい」
院長もへらへら笑っていた。
「だって面白いだろう?ええとね、
イベントなどがあると、
その人達の荷物を持ちながら、見学もしたいという、
ちょっとミーハーなクラブなんですよ」
こっちもぷーっと笑った。
「それで、荷物持ち隊なんですか?」また俺が聞いた。
もう皆で笑いこけた。楽しすぎるよ。
その後は上から順番に降りて来て、各階をちらっとだけ眺めた。
検査室もびっしりと並んでいたが、
外来の診察室が密集していて、混みあっていた。
最後に1階に降りた。
カフェがあって、莉子さんのオリジナルの赤い菓子缶がかわいかった。
メニューも中々おいしそうだった。
それから住居棟と、その下の整形・リハビリセンターを見学した。
どこも狭いのか? 診察室がぎっしりあった。
「あのう、整形はやはり患者さんが多いんですか?少し窮屈そうに見えますが」
「ふふふ、わかります?大変なんですよ。多くて。
うちは送迎のシャトルバスが5台くらいあって、
患者さんを送迎するので、集まっちゃうんですよ。
帰りにはスーパーにも寄りますしね。
それと具合の悪い人は自宅まで送迎しているんです。
これは非公式になんですけどね」
はあ、聞くんじゃなかった。落ち込む......。
次にサテライトセンターの1階を抜けて、
連絡通路を通り、一番新しいという2号館の1階に出た。
そこにはATMや院内薬局、売店、眼科、耳鼻科などがあった。
「2階が救急センターと産科婦人科エリアです」
土曜日のせいか患者は誰もいなかったが、
ベビールームを見ると、最新の高級な保育器しかなかった。
うちとは大違いだ。
ベビールームには隣の建物に逃げられる、
秘密のドアがあるというので驚いた。
火災用だそうだ。
保育器ごと最優先で逃がすんだね。
ちょっと感動した。
婦人科エリアは本当に、
プライバシーを最優先した造りで感心した。
あと、救急スタッフが、
三次指定病院というだけあって大勢いた。
そしてあちこちのスタッフの多さにも、
驚くばかりだった。
父が「麻酔医は何人くらいいるんですか?」
「5人ですね。医師では内科系が一番多くて17名です。
その次が外科で専攻医1名と、
専攻浪人3名を入れると全部で13人です。
他に桜丘救命センターもありますが、
そちらの人数はこの中には入れていません」
頭がくらくらした。
淳一が「外科に専攻医の浪人が3名もいるのですか?
1年もロスするのにですか?」と尋ねた。
「そうなんですよね。
今年は初めて初期研修生や専攻医を受け入れたのですが、
専攻医は全体で3名しか受け入れられなかったんです。
内訳は外科が一番多くて、
その3人は“浪人してもいいから次の年に入れて欲しい”というんです。
それで受け入れることにしました。
うちは岩城外科医という、
天才的頭脳って皆で言ってる医師がいてね。
優秀なので皆が来たがるんですよ。
最新のAIの手術機械を導入したので、
ご覧になりますか?」
そして手術室を上から眺められる部屋に案内してくれた。
これは映画で見るやつか?
AIの手術機械が凄すぎる.......。
大学病院にはあるけど……ここで見るとは。
「この席は医師や医大生なら解放しているので、
ネットで予約しないと入れないんですよ」
はあ……。
その後はICUや上の入院棟などを見せてくれた。
そして10階に出た。
ここは夏さんや莉子さんの会社が並んでいるようだが、
半年後には浅田タワーに引っ越すのだそうだ。
ともだちにシェアしよう!

