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第23話 アンケート
颯太が大学から帰ってきた。
菜の花病院で受けたショックと敗北感で、
全く立ち直れていなかった。
「先生、元気がないの?」
颯太が心配そうに覗き込んでくれた。
「うん、そうだよ。慰めてくれない?」
「いいよ。ここに座って」
ソファに呼ばれ、颯太は自分の膝をポンポンと叩いた。
「ここに頭を乗せて」
言われるままにソファへ横になり、颯太の膝に頭を預けた。
片手でそっと目を閉じさせられ、
「いい子いい子」
そう言いながら、優しく髪を撫でてくれる。
次に胸を軽くとんとんと叩いて、
「眠っていいよ」
子守唄まで歌ってくれた。
なんだか涙が滲んできた。
俺はどうしたんだろう?
「颯太、菜の花病院に行ってどう思った?」
「う〜ん、分かんない。他をあまり見たことがないんだもん。
あ、でも前に佐久間病院にも少し行ったよね」
「でもソフトクリームは美味しかっただろう?」
「うん、あれはすごく美味しかったねえ」
「あれを佐久間病院に置いたら、喜ばれると思わない?」
「うん、思うよ」
「入れてもらったらいいじゃない?」
「うん、それもだけどさ、他にもいろいろ思うことがあったんだよ」
「ふ〜ん、それで元気がないの?」
ふふ、と颯太が笑った。
「そうなんだよ。情けないよね?」
「ううん、全然そう思わないよ」
「なんで思わないの?」
「だって佐久間病院だって、いいところはいっぱいあると思うし」
「例えば?」
「それは分かんないけど……、
でも、あれだけ患者さんがいるんだから、いいんじゃないの?」
ちょっと頬が緩んだ。
単純な理由なんだけど、そうなのかな?
そうだ、病院のスタッフに聞いてみようかな。
良いところと、変えてほしいところを。
よし、決めた。父さんに言っておこう。
「颯太、母屋にご飯に行こう。
父さんに話したいことができたよ」
「うん、行こう」
食事の席で、皆にアンケートを取りたいと、
父さんに話すと、渋い顔をされた。
「どうせ、ろくなこと書かれないぞ」と父。
「うん、かもね。でもそれでもいいから、
やってもいいかな?」
「兄さん、燃えてるんだねえ。
菜の花病院の影響なの?」と淳一。
「あのさ、比べても無理だよ。
アンケートなんてやったら、
ぼろくそに言われちゃうよ。いいの?」と楓。
「今までさ、俺、ぼろくそに言われたことがないんだよね。
だから今のままでいいんだって、ずっと思ってた。
でも菜の花を見て、
それは間違いじゃないかって思ったんだよね」
「ふ〜ん、そうなんだ。
じゃあ好きにやってみれば。わしは構わんぞ」
父さんがOKしてくれた。
よし、食後はアンケートを作ろう。
あとは、アンケートを入れるボックスも必要だな。
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