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第27話 懲戒解雇
不正の証拠がだんだん固まってきた。
しかし、もう一つ決定的な証拠が欲しかった。
友谷くんが「この業者が一番怪しいですよ」と、
言っていた業者に揺さぶりをかけることにした。
監視カメラだけでなく、マイクも仕掛けた。
厨房内にもカメラを設置してある。
そして俺から直接、業者に電話した。
「不明瞭な伝票がたくさんあるが、どういうことだ?」
電話を切った直後から、
ずっとカメラを追っていた。
すると業者がすぐに係長に電話したようだ。
慌てて外に出る係長。
よし、録音開始だ。
俺もイヤホンで内容を聞いていた。
「安藤さん、どうなってるんですか?
院長から“怪しい伝票がいっぱいある”って言われたんですよ」
「俺だって今はそれどころじゃないんだよ。
騒ぐな。俺に任せとけ、いいな」
「とにかく、こっちは安藤さんに言われた通りにしただけですからね。
こっちの責任はありませんから。
こっちも書類を用意して反論するつもりです。いいですね?」
「何をふざけたこと言ってんだよ。
そっちが仕掛けたから、
しょうがなく俺が脅されてやったんだろうが!」
「はあ? 何を言ってるんですか。
それならこっちも弁護士に相談します。そのつもりで」
それだけ言って、業者はさっさと帰っていった。
ふっ、これで癒着の証拠になるだろうか?
うちの顧問弁護士に相談した。
「無断録音は証拠にはならない。
ただし、本人に聞かせて脅威を感じさせることで、
懲戒解雇にはできる」と言われた。
父にこの結果を知らせ、証拠の映像や伝票を見せた。
しばらく黙っていた父は、
「全部陽一に任せる。思うようにやりなさい」
と言った。
「はい。では懲戒解雇にします」
すぐ本人を院長室に呼び出した。
おどおどしている。不安なのだろう。
「今まであなたがやってきた不正の証拠を、すべて揃えました。
これで業務上横領として告訴します。
すぐ警察に連絡しますから、
逮捕してもらいます。そのつもりで」
そう言って、電話をかけるふりをした。
「ああ、待ってください。
事を荒立てるのはやめてくださいよ。
俺にも妻子がいるんですから……」
「言いたいことはそれだけですか?
あなたを懲戒解雇します。
警察につかまりたくなかったら騒がないで、
静かに30分以内に荷物をまとめて出ていってください。
30分後にまだいたら、直ちに警察に電話します。
あと、このことは社内報でも流します。
……さあ、出て行け!」
渋々と部屋を出ていった。
そして俺は厨房に行き、
彼が不正を働き、懲戒解雇になったことを皆に伝えた。
これ以上、余計なものを盗まれたくなかった。
皆、あっという表情で驚いていた。
友谷くんがちらっと俺を見て、親指を立てた。
ふっと二人で笑った。
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