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第41話 菜の花病院を見学

 加護室長と菜の花病院にお邪魔した。 院長室では、女性の副院長や看護部長、看護副部長などを紹介してくれた。 皆しっかりしているし、空気が自由な感じがした。 さぞ院内の風通しがいいんだろうなあ。 あとは11階に案内がてら、いずれ出来る整形ビルや、 スキンクリニックなどの説明をしてくれた。 どこまでこの駅前の土地を買ったんだろうなあ。 凄いねえ、企業って。 うちは増やす土地なんてないし、資金もない。 11階で、菜の花フーズの研究員の三輪さんと友井さんを紹介してくれた。 どんな人だろうと思ったが、どこにでもいる普通のシニアの方だ。 パワフルな感じでもない。 そもそもの菜の花フーズが出来たきっかけを、北原院長が教えてくれた。 この二人のお礼の料理が発端だったんだ。 いくら美味しいからといって、 「食品部門をこれで始められる!」なんて普通は思わない。 多額の資金がかかっているんだ。 それは、友谷君がカフェの奨学生だったのを 社長がスカウトしたのと似ている。 先に“人ありき”なんだね。 うちも唯一できるとしたら、人を信じて賭けてみることかな? その一歩が加護さんだ。今日はどうだったんだろう。 後で聞くのが楽しみだ。 ソフトクリームはまだ開発中だそうで、 前回食べたものより一層美味しくなっていた。 前のだって十分美味しかったのにさ。 あれから改良する余地があったなんて信じられない。 「院長、これは休憩室に入れるしかないですね? お願いしましょうよ」 ソフトクリームに、サービスでいちごをたっぷり乗せてくれた。 やっぱり加護さんが食べても美味しいようだ。 まあ、誰が食べてもそう思うよ。 それから屋上ガーデンを見て、順々に降りて来た。 ICUと救急室と外科外来なども見て来た。 「あのさ、ここ救急スタッフがいっぱいいるんだよね。 うちは少ししかいないから潰れそうだよ。どうすればいいと思う?」 「そうですね、でもちょっと聞いてみましょうよ」 と加護さんが、どんどん救急科に進んだ。 「あ? 佐久間病院の立花院長と加護さんですか? 掲示板で連絡がありました」 声を掛けてくれたのは、岩城外科医。 ああ、かの有名な天才的頭脳の外科医か。 長身でいかにも闊達そうな表情だった。 「お邪魔しています。今、二人で勉強させていただいています」と俺。 「そうですか。どこでもご自由にご覧ください」 「あのう、救命医は何人くらいいるんですか?」と加護室長。 「今は4人ですね。他の外科医が9名。 外科の専攻医が1名と、浪人専攻医が3名です」 「は?、浪人専攻医ですか?」と加護さん。 「そうなんですよ。うちもあまりキャパがなくてね。 今年は3名しか受け入れられなかったんですよ。 でもどうしても外科が良いというので、受け入れました。 来年は正式に専攻医になりますよ」 「救急体制はどうですか? スタッフは足りているんですか?」と俺。 「ええ、大丈夫ですよ。3次なら受けますが、 混んでいる時は、2次なら桜丘の救命センターに うちのスタッフがいるので受け入れられます」 「あのう、それで皆さんちゃんと時間通り帰れるんですか?」と俺。 「はい、それは徹底して帰りますよ。院長に怒られますからね」 と岩城外科医が笑っていた。 「はあ、北原院長が怒るんですか?」と加護さん。 「そうなんです。救命医の残業はきりがないと言うんですよ。 だから引継ぎ用の30分だけ早出を付けても良いことになっています」 「ああ、なるほどね」 二人で声を揃えてしまった。 そんな感じで、二人でじっくりと全館を見て回った。 地下の駐車場や荷受け所、入院食の厨房なども見学させてもらった。 そして疲れて佐久間病院に戻った。 「どうだった?」 「それは、限りなく良い所がいっぱいありましたよ。 だからと言って、すぐうちが真似できるものでもないですしね。 ボチボチやりましょうよ」 その言葉に期待するよ。

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