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第44話 ファーストクラスにて

乗って離陸すると、すぐにドリンクのオーダーが来た。 「颯太は何にするの?」 「俺はねえ……アイスティーにする」 「うん、じゃあ俺もアイスティーにしよう」 ああ、それにしても落ち着かない。 アイスティーを受け取ると、 「まもなくお食事のサービスを開始いたします」とCAさん。 あ、そうだ。そういえばお腹が空いてきた。 10分ほどすると、CAさんがテーブルを広げ、 その上に真っ白なテーブルクロスをふわりと敷いてくれた。 カトラリーもナプキンも丁寧にセットされていく。 ああ〜俺もファーストクラスは初めてだからなあ……。 横の颯太を見ると、ニヤニヤしていた。 「先生、もうすぐ食前酒を聞かれるよ。何にするの?」 「颯太は?」 「俺はシャンパンだよ。だって出発のお祝いをしないといけないも〜ん」 「じゃあ俺もシャンパンにするけど、颯太は半分しか飲んじゃ駄目だよ」 「ええ?無理でしょう?」 「酔っ払って終わるぞ」 「は、い……半分にする……」 少しふくれた颯太。かわいい。 シャンパンを頼んだ。 前の席の楓を見ると、やっぱり同じように嬉しそうだ。 「さあ、颯太、乾杯しよう!」 「うん、新婚旅行にかんぱ〜い!」 すぐに機嫌が良くなる颯太。 前菜が運ばれてくる。 少しの野菜と、シーフード、スモークサーモンにキャビア。 爽やかな味で、シャンパンにぴったりだ。 「先生、今度はフィレのステーキか和食だってよ。どうする?」 「そりゃ決まってるだろう?和食だよ。 この先が長いからな、なるべく和食を食べておくよ。颯太は?」 「俺はフィレのステーキだよ」 「ふ〜ん、そうなんだ」 意外にワイルドだな。 俺の和食が運ばれてきた。 ・魚の西京焼き ・炊き合わせ ・ご飯 ・味噌汁 見た目もきれいだ。よしよし。 この先ずっとイタリアンだときつい。 「颯太、うまいか?」 ステーキに夢中の颯太に聞くと、もぐもぐしながら頷いた。 デザートまで食べ終わると、前の席の楓と友則さんが席を立った。 え? 何するの? CAさんがパジャマを二人分持ってきていた。 「楓、もう寝るのか?」 「うん、食べたら眠くなっちゃって。パジャマに着替えてくるわ」 「座席の上にマットレスを敷いてくれるので、寝心地が良さそうですよ」 友則さんが目が合うとにっこりして教えてくれた。 はあ〜気が合ってるんだねえ……。 ふ〜ん、そうなんだ。 「お休み用のお着替えをご用意しております」 CAさんがパジャマセットを渡してくれる。 「先生、俺たちも着替えてお昼寝しよう。先が長いんだもん」 「俺、ここで着替える」 ふ〜ん。 いくらなんでも俺は無理だよ。 トイレに行って着替えて戻ると── 「先生、ベッドできてるよ」と颯太。 「え、これ……本当に飛行機の中か?」 パジャマ姿の颯太が嬉しそうに寝転んでいた。 平らになった座席の上に敷かれたマットレスの柔らかさに驚く。 「俺、ここで暮らせる」颯太が上機嫌だ。 脱いだ服を手に持っていると、 CAさんが声をかけてくれた。 「お洋服、お預かりいたしますか?」 預けると、ハンガーにかけて座席脇のクローゼットに保管してくれた。 いたせり尽くせりって、こういうことだな。 その後は皆で昼寝。 起きたらドリンクと軽食。フルーツやお菓子。 まだそんなにお腹は空かない。 でも軽食を頼む人もいるようだ。 そして到着前には軽い夕食。 俺はもちろん和食にしてもらった。 もう名残惜しくなってきた。 それでも飛行時間は約15時間。 長時間だったけど、全然苦痛ではなかった。 それでも時差のせいで、着くのはイタリアの18時だという。 なんだか時間の感覚が狂いそうだ。 颯太はたっぷり昼寝したおかげですごく元気だった。 それなら結構なことだ。 ただ、俺は日程もホテルも全く知らない。 どうなってるんだろう? そもそもSPは空港のチェックインの前で 「行ってらっしゃいませ」と言ったきり帰ってしまったようだ。 現地でSPは付くのか? どうなっているんだろう。 俺は知らんぞ。

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