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第46話 スペイン広場の階段?10段でOK
翌日、早朝に目が覚めた。
隣で寝ている颯太の頬を、プニプニと軽く摘まむ。
「もう~なあに~、まだ起きてな~い……」
起きてるじゃん。(笑)
ふっ、しょうがないな。
それでも俺の胸に抱きついたままだから、トイレにも行けない。
そっと身体を外してベッドを出ようとすると、くっついてきた。
「颯太もトイレに行く?」
コクッと頷く。では優先しますか。
「じゃあ、おいで」
両脇に手を入れて抱っこしたままトイレへ。
いい加減目を覚ませよ……と思ったら、まだ目をつぶったまま。
器用だな。笑ってしまう。
無事目的を果たすと、アテンドに電話した。
「ルームサービスで朝食をお願いしたいんですが」
「かしこまりました」
よし。
「颯太、朝食が来るから着替えよう」
「う~ん……まだ眠いんだもん」
「そうか。じゃあ寝てていいよ。俺は先に食べてるね」
バチッと目が開いた。
「先生、俺のこと置いていくの?」
「うん、置いていく」
急に泣きそうな顔になった。
くすくす笑ってしまう。
「じゃ、早く起きてよ」
ぐずぐずしながらベッドの上で、頭だけ枕に突っ込んでいる。
ああ、なんでこう寝起きが悪いのかなあ?
しょうがない。俺は先に着替えるか。
「もうすぐ朝食が来ちゃうなあ」と焦らせてみる。
バルコニーで外の景色を眺めていると、ベルが鳴った。
朝食が運ばれてきたので、そのままバルコニーへ。
「颯太、朝食きたよ。一緒に食べよう」
渋々着替えている。なんだ、起きてんじゃん。
「颯太、午前中は散歩する?」
「う~ん……食べてから考える」
あ、食べたらまた寝るな。
「食べた後は寝ていいよ。俺はその辺を散歩してくるからね」
「ええ~?俺を置いて?」
「うん。それとも抱っこして散歩しようか?」
笑っていた。「もう~」と颯太。
「このオレンジジュース、濃くてフレッシュだよ。すごく美味しい」
「飲むー!」
飛んできた。喉が渇いてたんだね。
「どう?美味しい?」
「うん、最高」
「あれ?あそこにいるの楓たちじゃない?もう散歩してる」
「え?どこどこ?」
笑った。引っかかったな。
「ああ、もう見えなくなっちゃったね。どこ行ったんだろう?」
結局、美味しく朝食を食べて歯磨き。
散歩の準備はOK。
「颯太、早くしないと先に行くよ」
「あと10分待って」
パンにかじりつきながら言う。
ホテルを出ると、SPの車が来ていた。
「スペイン広場に行きたいんだけど、散歩した方がいいかな?」
アテンドが即座にノー。
「ぎりぎりまで車でお連れします」
散歩もできないのか。車に乗る。
スペイン広場にはすでに観光客が多く出ていた。
まあ、こっちも観光客だけどさ。
SPがピタッと接近してくる。
え?ここ危ないのか?
とりあえず、スペイン広場の階段を10段だけ昇って降りた。
十分だ。
次、バルカッチャの噴水で写真。
次、車で5分移動してトレビの泉でコイン投げ。写真。
次、手を噛まれるやつ。長蛇の列で並ぶらしい。
真実の口なんて自前で十分。
最初からカットだ。要らん。
「颯太、もう帰るよ」
「うん、わかった。なんだか忙しかったね」
「観光なんてそんなもんだろう?」
ホテルのロビーに戻ってドリンクを飲む。
はあ~……石畳って最悪だな。
足が微妙にひっかかって歩きにくいよ。
颯太もよく転ばなかった。偉いよ。
俺は舗装された道路が一番好き。
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