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第47話 三ツ星レストラン・アウレア

約束の12時には全員がロビーに集まった。 みんな生き生きとした表情で、心から楽しんだのが伝わってくる。 人って遊ぶと本当に顔が変わるんだな。 「じゃあ、レストランに行こうか?」 「はーい」 返事も揃って、車に乗り込んだ。 ホテルから車で15分ほど走ると、目的地に着いた。 薄いレンガ色の、落ち着いた雰囲気のホテルだ。 その時、また上川秘書からメールが届いた。 『ホテルの屋上がアウレアという三ツ星レストランです。 メニューは見なくて大丈夫です。 10皿のテイスティングコースと、ノンアルのペアリングを注文しています。 少しずつの量で、シェフの世界を旅するような料理です。 飲み物は料理に合わせたドリンクが提供されますのでご安心ください』 感謝とお礼の言葉を返信した。 「さあ、どうぞ皆様、ご案内いたします」 アテンドに案内され、エレベーターで最上階へ。 「うわあ~すごい豪華だねえ~」と楓。 「もう光がまぶしいですねえ」と紀子さん。 重厚な木製の家具、ガラス扉の中には骨とう品レベルの、 美しい磁器の壺や花瓶に置物が並んでいる。 キャビネットの背面が鏡になっていて、 ライトが反射し、飾り物をさらに引き立てていた。 母が洋食器好きなので、俺も小さい頃からいろいろ見てきた。 本当は一つ一つじっくり眺めたり写真を撮りたかったが、そうもいかない。 壁には金色の重厚な額縁に入ったヨーロッパの昔の人々を描いた絵画や、 風景画が飾られている。 はあ……ため息ものだ。 そこへ、上川秘書から追伸が届いた。 『飾り物はほとんどホテルのオーナーのコレクションだと思います。 それと、ブラックカードは安心してお使いください。 信託銀行には資金移動でカード決済を依頼しました。どうぞご心配なく』 笑った。タイミングが良すぎる。 「陽一兄さん、颯太兄さん、 こんなに素晴らしいレストランに連れて来ていただいて、 本当にありがとうございます。一生の記念になります」 いつも丁寧な友則さん。 「喜んでくれたらうれしいよね?」と颯太が俺を見る。 「うん、颯太、ありがとうね。俺もうれしいよ」 エヘへへと笑っていた。 大きな丸テーブルに6人分がセットされていた。 楽ちんだねえ。 すぐにドリンクが提供された。 ノンアルだから安心して乾杯できる。 「淳一、たまには乾杯の音頭を取ってよ」 「はい。ローマの素晴らしい三ツ星レストランと、 陽一兄さんと颯太兄さんに感謝して、乾杯!」 くすくす笑いながらグラスを合わせた。 上川秘書のメールを皆に読んであげると、 「へえ~」と声が揃った。 次々に提供される料理は、どこか会席料理にも似ている。 細かい仕事が本当にすごい。 前菜は、色とりどりの野菜で作られたミニチュアの世界のようで、 みんなでじーっと眺めてしまった。 それに合わせたいろんな味のドリンクが来て、それが絶妙だった。 なるほどね、これがペアリングのドリンクなんだと思った。 最後まで大満足で、美味しく食べることができた。 満たされすぎて、もう動けない……そんな感じだ。 「ああ、おなか一杯になったね。なんだか眠くなってきた」と颯太。 「もうちょっと頑張って。これから2か所に行くんだからね」と俺。 「どこに行くんですか?」と紀子さん。 「これから、バチカン美術館、システィーナ礼拝堂、サン・ピエトロ大聖堂と回る予定だよ」 「すご~い。楽しみです」 まあ、アテンドに朝聞いただけなんだけどね。 そこへボーイさんが会計書をさりげなく置いたので、 待ってもらい、財布からブラックカードを出して渡した。 にこっと笑って預かっていった。 ああ~上川秘書=神だな。 カードを返してもらい、 「じゃあ、そろそろ出ましょうか?」 と声を掛けた。 レストランを出ると、楓が小声で、 「お兄さん、いつからブラックカードなんて持ってたの?」 と目を丸くして聞いてきた。 確かに、今までなら普通のゴールドカードで十分だった。 「結婚した時だよ。 上川秘書が今後必要になるからお作りくださいって言われたんだよ」 「うわ~凄すぎる! おそるべし、立花家」 まだ目を見開いている楓。 笑いをこらえた。 颯太もそばでくすくす笑っていた。 一通り回って、もう歩き疲れた。 イタリアの古い歴史を知る旅になった。 建物を見るのが一番だね。 夕方、ホテルに戻った。 夕食は軽いものをお願いした。 颯太はもう目がトロンとしていて、かなり疲れている。 早く寝かせないと。 部屋に戻り、颯太にちょっと気になることを話した。 「あのね、颯太。このホテルの内装ってどう思った?」 「うん、すごくきれいでいいと思うよ」 「この部屋をデザインした人に会ってみたいと思わない?」 「あ、もうわかった! 家の中を全部こんな感じにしたいとか、 そういうことでしょう?」 「バレた? 颯太は嫌かな?」 「ううん、俺はあまり興味がないから、どうでもいいよ」 「じゃあ、明日チェックアウトの時にロビーに来てもらって、 名刺交換しておきたいんだよね」 「うん、いいんじゃない? そうすれば?」 「わかった、アテンドに頼んでおくよ」

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