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第54話 魅惑のポジターノ
昼寝をした後、まだ眠っている颯太をそのままにして、
コーヒーを淹れ、バルコニーで海を眺めながら飲んでいた。
そこへ、珍しく紀子さんからメールが来た。
え~、なんだろう?
「外に出てみてください。
ものすご~く可愛いお店がいっぱいあって、
興奮しました! ぜひお奨めです!」
だって。
笑った。かわいい。
とりあえず
「わかった、こっちも行きますね。ありがとう」
と返信した。
淳一もこれじゃあ、かわいくて堪らないな。
のりちゃん、淳ちゃんの世界だもんな。
さて、颯太はどうしよう?
置いて行くと恨まれること必須だな。
しょうがない。起こすか。
ベッドに座って、颯太の頬をすりすりしてみた。
ついでに耳元で、
「外の店がすっごく可愛いんだってよ」
とささやいた。でも駄目。
とりあえず先に着替えよう。
まだバスローブのままだった。
俺も出かける気満々だよな。
のりちゃんが可愛くて興奮したんだ……。
颯太の服も出しておいた。
よし、奥の手だ。
「颯太、俺ちょっと出かけて来てもいいかな?
ホテルの外の店がめちゃめちゃ可愛いらしいよ。
紀子さんからメールが来たんだよ」
少し大きめの声で話しかけた。
そしたら、バチ――っと目を開けた!
やっぱりね。(笑)
黙ってさっさと起きて、
俺が用意した服に着替えていた。
ちょっと笑ってしまいそうだった。
くしを持って来て、髪を整えてやった。
「もう~、なんで俺のこと置いて行くの?」
アハハハ、怒ってる。
「置いて行くわけないだろう?」
「本当?」
細い目で睨まれた。
「かわいい颯太を置いてどこに行くんだよ。早く出かけるぞ」
「うん、行く」
たちまち機嫌が直る颯太。
一歩ホテルの外に出てみると、
なるほど、2分くらいで超かわいい店があるじゃないか!
「颯太、めちゃめちゃ可愛い店じゃん。いっぱい買おうよ」
「うん。買いまくる」
この辺の宿泊客だろうか?
みんなTシャツに短パンのおじさんやおばさま達が、
夢中になってかごいっぱいに買い物をしていた。
「ねえ先生見て。このレモン飴、4ユーロだって。安くない?
これさあ、先生も病院の皆にあげればいいじゃない? 一人2個ずつさ」
「えー、たった2個ずつか?」
「うん。だって全員だとさ、いくつ必要なの?」
「う~んと、多分600人はいないけどね」
「これね、一袋が20個入りだって。だから60袋買えばいいんだよ」
「いいけどさ、誰が持つんだよ?
だってさ、空港に行ったらまたなんかお菓子を買うだろう?」
「あ! 閃いた。俺たちの荷物をほとんど日本に送っちゃおうか?
軽くしてさ、その分お土産を詰めて帰ろうよ」
「ああ、それはいいかもね。
じゃあ、買いたいものをいっぱい買っていいよ。
ただ、ローマまでは持って行った方が良いかもよ。
多分、あそこだとスムーズに航空便で届くんじゃないの?
あ、ミツワはどうするの?」
「あ、そうだった!! 700人分もある。
どうしよう? 統一するかな?」と颯太。
「どうせ送るんなら良いんじゃない?
ローマに着いたらすぐ頼もうよ」
「うん、わかった」
イタリアの食器は明るい色使いが最高だ。
割れやすそうだけど、しょうがない。
タイルも買いたかったが我慢だ。
それよりも、レモン飴の在庫をどんどん出してくれて、
全部間に合ったのは凄いよ。
どんだけ売れてるんだろうか?
そして、ここの店主とも名刺交換をしてもらった。
「先生、この店と名刺交換してどうするの?」
「決まってるだろう? 店ごと買うんだよ」
「はあー?」
「はは、ウソだよ。まあ、なんでも良い所は
伝手を作っておくと役に立つだろう?」
「ふ~ん、そうなんだ。将来が心配だなあ。
ミツワの中にこの店を作ろうと思ってない?」と颯太。
「あ、いいねえ~。それもあるねえ。俺も店番しようかなあ?」
「またあ……医者のくせに……」と颯太。
くすくす笑っちゃう。
そして歩くたびに夢中になるくらい、
かわいい雑貨だったり、美味しそうなペストリーだったりで、
早速おやつに1個ずつ買った。
今夜はフルコースだからなあ。
店はどこに行っても写真を撮って、名刺を交換してもらった。
「いったいどうするの?」
とばかりに横目で颯太が見ていた。
まあまあ、待て。
材料は集めておかないと駄目だろう。
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