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第29話
悠は、我慢、逃避、諦めもしていない。現実を選択している、それだけ。
絢聖は、二人の間に入る行為を、選択と感じているかもしれないが、それは違う。
秋頼を選んだら、絢聖は壊れる。あの二人は、相性がよすぎる。故に、歯止めが効かなくなる。それが予想できる。壊れないために、現実を俺が受け持つ。それが、悠の役割だった。
ある夜、絢聖がぽつりと言う。
「……悠は、強いね」
それは、褒め言葉だった。でも、呪いにも聞こえる。
「強くない」
悠は即座に否定する。
「現実にいるだけだ」
嘘じゃない。
絢聖は、何も言わない。その沈黙が、すべてを物語る。現実は、彼の望む場所ではない。それを、悠ははっきり理解している。
それでも、続ける。壊れないように。日常を続ける。
ふと思う、何のために…と。絢聖は壊れたがっている。それを必死に、止める。先回りして、守る。
でも、壊したくないと思うのが自分だけなら、それは絢聖のためじゃない。
自分が…安全な場所に居たいだけ。正しく、穏やかでいること、それを保つための犠牲が多すぎる。
日々、削られていく。限界が近いのを感じている。それでも、終わらせない選択をする。それが愛だと信じることでしか、自分を保てなかった。
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