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[バク] 7.このチームの仕事
おじさんはもう帰るのだろうと思ったが、サーバルが意外なことを言う。
「では、映画をご用意します。字幕版でよろしいですよね?」
おじさんは「はい」と頷く。
事前に流れを説明されていたのだろう。
突然の映画鑑賞にも驚いていない。
サーバルが部屋の明かりを消し、リビングの大きなテレビで「タイタニック」のDVDが再生された。
確かこの映画は三時間を超える長さだったはずだ。
僕は酷く具合が悪く、映画の内容など頭に入って来ない。
しかしいつもは独りで耐える辛さも、周りに知っている人達の気配があることで、多少は耐えられる気がした。
ディンゴはリビングの奥に置かれていたロッキングチェアに腰掛けている。
今度はヘラジカも部屋を出て行かずソファに深く座り、画面を見ていた。
「映画、終わったぞ」
ウトウトしていると、ディンゴが小さな声を掛けてくれた。
テレビは消え、部屋には照明が付いている。
「では先ほどの想いをもう一度、お聞かせいただけますか?」
サーバルがおじさんを促した。
おじさんは首を傾げ「あれ?」と唖然としている。
「全く少しも愛おしい感情が湧いてこない。どこが好きだったのかも、分からない。あんな子に、娘より若い子に私はどうして振り回されていたのだろう?」
さっきと全く様子が違っていた。
まるでおじさんから、憑き物が落ちたようだ。
ヘラジカは満足そうに微笑み、サーバルは当然だという顔をし、ディンゴは感心したように頷いている。
おじさんはローテーブルの上にある四つ足人形に跪き、拝むように手を合わせた。
僕のこともチラッと見て「ありがとう」と微笑んだ。
サーバルはその場で一万円札を何枚も受け取り、領収書を手渡す。
そして外まで見送っていった。
「では了也、さっき説明した通りです。後はよろしくお願いしますね」
ヘラジカがそう言うと、ディンゴは僕の背中に手を当てソファからゆっくりと起こしてくれた。
リビングの隣にある僕の部屋まで、お姫様抱っこの状態で運んでくれる。
「じ、自分で、歩けます」
恥ずかしかったから、そう言って抵抗したが「これがディンゴの仕事です」とヘラジカが告げた。
ディンゴは見た目以上に力持ちのようで、安定した足取りは頼もしかったが、彼自身もなんだか恥ずかしそうに見えた。
僕の部屋は常夜灯しかついていなかったが、暗いままベッドの上に下ろされた。
ディンゴはベッドの端に腰掛ける。
外からヘラジカがゆっくりと扉を閉めた為、ディンゴと自室で二人きりになった。
「可哀そうに。辛いだろ」
コクリと頷く。
「俺自身の役割について、ヘラジカから聞いている。けれど俺は半信半疑だ。不快だったらすまない」
何の話しだろう?
僕の不安な顔が、彼に伝わってしまったようだ。
「目を閉じていろ」
安心する低い声は、やさしく心に届いたから素直に従った。
すると、ディンゴが作務衣の下衣についたウエスト紐を緩め、そこから右手を滑らせてきた。
「え?な、何を?」
「大丈夫だ。痛いことはしない」
抵抗したけれど、なだめるように左手で頭を撫でられる。
右手は下着の中に入ってきて、直接中心を触られた。
ディンゴの手は大きくて温かかったが、今まで誰にも触られたことのない、自分ですら触らない部位だったから、戸惑いしかない。
「心配しなくていい。排出すれば楽になるらしいから」
ずるずると下衣と下着を膝まで脱がされた。
ディンゴは露になった僕の中心を、長い綺麗な指でゆっくりと上下にしごく。
僕の中心はその刺激に呆気なく硬くなって、形を作った。
心臓もドクンドクンと高鳴ってくる。
「やっ、あっ」
変な声が出てしまい、慌てて両手で口を塞いだ。
僕の全身は熱くなってゆき、自分が興奮していることを自覚せざるを得ない。
呼吸が荒くなって、はぁはぁと息をして、指の先にまでビリビリと快感が走る。
眼を見開き助けを求めるようにディンゴを見れば、真っ直ぐな視線はやさしげだった。
「出せばいい」
ディンゴの中心を擦る手の動きが早くなって、僕は呼吸も忘れて昇り詰める。
「んぁっ」
張り詰めていた物が一気に解放され、目の前が閃光のように光った。
ほとんど自分でした経験もない僕にとって、とんでもない体験だった。
さらにディンゴが、ティッシュで拭いてくれようとするから「じ、自分で、します」と奪い取り、腹に飛び散った白いものを拭く。
その白濁がディンゴの手にも掛かっているのが見え、僕は慌てる。
「気にするな。後で手を洗うから」
そう言って、笑ってくれた。
僕は下着と下衣を引き上げて、恥ずかしさで布団を頭から被る。
ディンゴがポンポンとなだめるように布団を叩いてくれた。
「可哀そうに」
低く響く声に、僕は今可哀そうなのだろうか?と思ったが深くは考えられない。
身体が妙に軽くフワフワとし、急激な眠気に抗えず眼を閉じた。
どれくらい寝ていただろう。
熟睡した気もするが、時間にしたら短かったかもしれない。
眼を開けると、三人が僕のベッドの周りにいた。
「気分はどう?」
サーバルに聞かれて、思わず上半身を起こし自分の手や足を見た。
信じられないくらい、身体が軽くなっていた。
常に体調不良が続く前の、小学生の頃に戻ったようだ。
思わず「すごい……」と呟く。
いつもはスマートに発声できない声も、喉からスルッと音となった。
ヘラジカが僕の表情を見てから、ディンゴとサーバルを見て、口を開いた。
「これが私たちチームの仕事ですよ、バク」
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