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[バク] 16.大人への階段

「じゃあさ、秋良くんは、キ、キスはしたことあるの?」 「そりゃもちろん、毎回必ずしてもらうよ。健ちゃんはテクニックが凄くて……」 突然、コンコンとノックする音がし、ドアが開く。 「ドーナツ、食べる?」 サーバルが声をかけてくれたから、秋良くんの話は中断する。 僕は正直、少しホッとした。 「秋良くんさ、うちのバクにあんまり変なこと吹き込まないでよ」 「えー。僕、何にも言ってないですよー、洋介さん」 誤魔化すように笑う秋良くんとリビングへ移動し、サーバルと三人でドーナツを食べた。 話題は、リビングに置いてあるヘラジカが作ったという、四つ足人形のことへと移る。 「うちの人形も不細工だけど、ここのも不細工だねぇ。和樹さんて器用そうに見えるのに、下手すぎじゃない?」 秋良くんのところの四つ足人形の写真を見せてもらい、「確かに!変な顔」と僕らは、ひとしきり笑った。 そんな僕らの様子を見ていたサーバルが、秘密を共有するかのように、教えてくれる。 「あのね。どのチームが持っている人形も、これと似たり寄ったりの仕上がりなんだけど、一体だけとてもよく出来たバク人形が存在するんだよ。あっ、中国の想像上の生き物の「獏」ね」 「獏の人形……」 「うん。この家の和樹さんの部屋に仕舞われている。和樹さんは、あれを模倣して作ってるんだろうな。全然似てないけどね」 「へー、その本物の獏人形、見てみたいよね、洸くん」 「うん、見たい!見せてもらえるかな?」 「いや、たぶん無理。きっとあれは和樹さんの宝物で、俺はたまたま見ちゃったんだけど、詳しいことは何も教えてもらえなかった。でも君たちのことを「バク」って呼ぶのも、あの人形が存在するからなんじゃないかなぁ」 「サーバルとか、ディンゴとか、ヘラジカの人形もあるの?」 秋良くんが聞くと、サーバルは首を横に振る。 「そっちは適当に動物の名前をつけただけの、こじつけだと俺は思ってる」 — その日の夜。 客が帰り、部屋でディンゴに作務衣の下衣を脱がされたとき、秋良くんのせいで、いつもより変に意識してしまった。 触って解毒してもらっているこの行為も、僕が望めばもっと先へ進むことができるのだ、と。 考えただけで、僕の心臓はドクンドクンと大きく脈打った。 「どうした?辛いか?」 ディンゴが低いやさしい声でそう聞いてくれたけれど、秋良くんから聞いた話など伝えられない。 そもそもディンゴは、僕なんかと気持ちよくなりたいと思ってくれるだろうか? 「すぐに楽にしてやるからな。可哀そうに」 ディンゴの指が僕の下腹部を撫でれば、僕は身体を震わせ快楽に身をゆだねる。 行為が進めば、グチュグチュと卑猥な音が部屋に響いてきた。 「あっ、んぁっ」 甘い声が口からこぼれて、思考力が鈍って、ディンゴの肩にしがみついてしまう。 タイミングを見計らったようにディンゴの手の動きが加速すると、僕はビクっとのけ反り白濁を撒き散らした。 息が乱れ、気持ちがよくて、よくて。 そして鈍い頭で、僕は欲深くなる……。 「り、了也さん。キ、キスして、くれませんか……」 ディンゴはほんの一瞬戸惑った顔をしたけれど、顔を近づけ、僕の唇にチュッと触れるだけのキスをしてくれた。 その感触は想像以上に柔らかく、温かく、やさしく、満たされた気分になる。 「初めてだったか?」 コクリと頷くと「可哀そうに」とまた彼は呟く。 そしてもう一度、今度はゆっくりと、唇が近づいてきた。 肉厚な舌がねじ込まれ、口内を舐められれば、その熱量と甘美さに鈍い頭の芯がしびれて、クラクラとする。 「キス、気持ちいい……」 いつも吐精した後は、強烈に眠くなる。 今夜も例外ではなく、キスのおかげで堪らなく幸せな気分になったまま、僕は気を失うように眠ってしまった。

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