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[ヘラジカ] 11.ヘラジカへの不満
面談後、他チームの拠点へ顔を出し、夜になってまた吉祥寺へ戻った。
今日は奇数日で、ほんの少し前に客が帰ったところだった。
しんとしたリビングには、洸の喘ぐ声が微かに漏れ聞こえている。
盗聴器を了也に破棄されてしまい、洋介は洸の部屋を気にするのを諦めたようで、シャワーを浴びていた。
このところ了也はタイタニックの時間がシャワータイムで、ゆえに風呂の順番も早く回ってくるのだろう。
続いて私もシャワーを浴び、常夜灯のみが付いた洋介の部屋をノックする。
彼はベッドに寝転び、スマホを弄っていた。
あと二十分もしたら日付が変わる。
「アンケートの『①ヘラジカへの不満』読んでくれた?」
「えぇ、読ませてもらいましたよ」
「……どう思った?」
言葉では答えずに、眼鏡を外す。
洋介に覆いかぶさるようにベッドへ乗って、唇と唇を合わせた。
当然そのつもりだっただろう洋介は、私の首に腕を回してくる。
口付けはあっという間に深くなり、舌と舌が絡み合った。
洋介のTシャツを捲りあげ、指先に愛をこめ確かめるよう肌を撫でてゆく。
「和樹さんも、脱いで」
二人で裸になれば、洋介の指も私の背中をゆっくりと滑った。
触られた箇所は熱を感じ、酷く官能が刺激される。
込み上げる想いを伝えるために、耳の下に、首筋に、鎖骨に、そして、右胸の突起に、唇を押し当ててゆく。
「んっ」
小さな声をあげる洋介に、もっともっと想いを届けたくて、その小さな膨らみを口に含んで舌で転がし、左側も指で摘まんだ。
洋介は私の頭をギュっと抱きしめて、ほどいている長い髪を指で梳いてくれる。
私の指は、洋介と深く深く繋がれる場所へと辿り着く。
洋介は、風呂場で準備をしてくれたのだろう。
指はねっとりと、中へ吸い込まれていく。
「あっ、ふっ」
指を奥へと進め、いい箇所を探り当てれば、洋介が上擦った高い声を上げる。
指を増やし、水音を立て人差し指と中指を出し入れすると、洋介の腰が揺らめいた。
「だめ、もっと、ゆっくり、ゆっくりして、か、和樹さん、ねぇ」
もう雫を溢しているくせに、そんなことを言う。
煽っているようにしか聞こえない洋介の言葉を無視し、脚を高く持ち上げ、自分の昂ったものをほぐれた箇所に押し付けた。
めり込んで入ってゆくほどに、洋介の顔が歪む。
苦しいだろうに、ふぅふぅと息を吐きながら濡れた眼でじっと私を見つめてくる。
「洋介」
名を呼ぶとコクリと頷き、うれしそうに眼を細めた。
洋介の中は熱くうねって私を包み込み、呼吸の乱れを誘う。
洋介も、揺する度に快楽に満ちた甘い嬌声をあげる。
「き、きもちいい、あっ、いい、かずき、さん、あっ、んぁっ、でも、まだ、まだダメ、ねぇ」
その顔が、可愛くて、愛おしくて、堪らなくて、加減をするのは不可能だった。
「やっ、まって、まって、あぁ、いいっ」
中を擦りあげれば、彼の指はシーツをきつく掴む。
そんな状態で洋介は首を反らせ、壁にかかった時計を見上げる。
つられて私も目線を移動すると、長針と短針がてっぺんで揃おうとしていた。
「あっ、もう、もう、ダメっ」
ビクッと身体を震わせ白濁を飛び散らせた洋介が、私をきつく締め付けてきた。
私は最奥へと大きく突き上げ、彼の中に吐精する。
「愛してるっ」
達する瞬間、全く言うつもりでなかった言葉を洋介の耳元で呟いてしまった。
涙を滲ませた洋介は、もう一度首を反らせ時計を見る。
「誕生日、おめでとう」
そう言ってくれた彼に、全ての想いを込めてキスを落とした。
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①ヘラジカへの不満
好きだとか、愛しているとか、絶対に口に出して言ってくれないところ。
バクを警戒しているのか、ディンゴに遠慮しているのか知らないけれど、今後も言ってくれないだろうことは、よく分かっている。
だから、俺も口にはしないよ。
でもその分、和樹さんと触れ合うときには、指先に愛しい気持ちを込めています。
和樹さんだって同じでしょ?
そう思っていいんでしょ?
そうじゃなきゃ、抱き合っただけであんなに気持ちがいいはずがない。
愛をこめてキスをしてくれるなら、言葉なんてこれからもずっと必要ないから。
大丈夫だから。
もしも、俺と和樹さんの関係がつまらないセフレではないのならば(本当はとても不安です)、貴方が誕生日を迎える今夜、部屋で待っています。
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