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[ディンゴ] 3.恋心では意気投合

洋介が相談者にするのを真似るように、洸がコーヒーを淹れてくれた。 そして気を遣い自室へ引き上げようとするので、引き留めてソファの隣に座らせた。 「あの私、了也さんを尊敬しているんです。社内の人間にもクライアントにも下請けさんにも、言うべきことはバシッと口にされて。そのお蔭で円滑に進んでいることってたくさんあると思うんです」 「ん?」 「遅くまで仕事をされる日と、早くに帰宅される日を交互に設定されていて、メリハリがある働き方も素晴らしいと思います」 なんの話が始まったのか、やたらと俺を褒めてくる女性に警戒心が募る。 洸もさぞかし戸惑っているだろうと思いきや、なぜか眼をキラキラとさせ、女性が俺を褒める言葉を聞いている。 「へー。仕事場の了也さんってそんな感じなんですね!」 思わず相槌を打った洸に、女性は味方を見つけたかのように、話を続ける。 「そうなんです、とにかく仕事ができて。今やっている増刊号の編集も、専属ではなく従来の仕事と兼業で担当されていて、他の人では中々こなせない量だと思います。仕事の判断スピードが早く、目の付け所が鋭い了也さんだからこそ、進められるんです」 俺が忙しいことを心配している洸の前で、そんな話をしないでもらいたい。 「毎朝、了也さんが自転車で出勤されると女性社員は皆、視線で追ってますよ。シンプルながらよく似合う洋服を身に纏ってらして、髪型もカーリーで長めなのに襟足やもみあげは短く清潔感があって」 「うんうん、格好良いですよね!了也さん、足が長くて背も高いし、腕もガッチリしていて、手も大きいし。あの自転車に跨る姿、すごく様になってる」 「ですよね!でも見た目だけじゃないんです。さりげなく高いところの物を取ってくださったり、率先して重い物を運んで下さったりそういう優しさも魅力的で」 洸と妙に意気投合し、分かる分かるとでも言いたげに頷いていて、思わず笑ってしまった。 「僕にも親切にしてくれます。それに物知りだから僕の知らないことを沢山知っていて、今も二人でランチをしてきたんですけど、了也さんの話を聞くのが凄く楽しいんです」 「一緒にランチなんて、それは羨ましい!」 「いつもおすすめの推理小説を選んでもらったりしているんですよ。これが面白かったならきっとこっちも好きだろって、関連づけて勧めてくれて」 「私も、推理小説好きです!お話が合いそう。ところでお二人はどういうご関係ですか?」 当然の疑問を女性が口にする。 何と答えたらよいかと迷ったが、洸がサラッと「同居させてもらっています」と返事をしてくれた。 洸が横にいれば、彼女は変な話を持ち出さないかと思っていた。 しかし洸を味方につけたと思ったのか、突然改まって背筋を伸ばし話を始めた。 「了也さんは今、お付き合いされてる方がいらっしゃいますか?」 「え?」 「あの……。私、貴方が好きです。尊敬しています。入社してからずっと気になっていて、憧れる気持ちがいつしか好きに変わって。冬に彼女さんと別れたと噂で聞きました。よかったら私とお付き合いしてください」 洸がびっくりした顔をして、早口で捲し立てる彼女を見る。 そして、この話を自分が聞いて大丈夫だったのかと狼狽える。 俺の返事を待ったりせず畳み掛けるように女性の話は続いたが、段々と洸がぐったりとしソファに身体を預け眼を閉じた。 「ごめん。彼、具合が悪いみたいなんだ。今日はもう帰ってもらってもいいかな?」 ついさっきまで、はしゃいで話を聞いていた男が急にぐったりしたのだから、女性は驚いていた。 「大丈夫ですか?」 洸のことを本当に心配しながら、帰っていく。 心の根が優しい人なのだろう。 翌朝、職場に行くと、彼女はもう俺への興味を無くしていて、視線で追われたりもしなかった。

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