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[ディンゴ] 8.バクの仕事が再開する
旅行から帰った和樹は、今後もしばらく、毎日この家に寝泊まりすることにしたという。
洸は忌み嫌っていた自分の部屋へ無事戻れたし、俺ともそれなりに会話するようになったから、もう心配することも無くなっただろうに。
いや、傍から見たら、まだまだ不安定なのかもしれない。
仕事が再開し、あの日以来三週間ぶりに洸を部屋に運んだ時には、やはり緊張した。
初めてこの家に来た夜と同じ、いやそれ以上に。
洸は辛そうにしながらも、始めからウェットティッシュの容器を抱え「で、出たら自分で拭くから……」と宣言してきた。
俺は彼の意志を尊重し「分かった」と頷く。
解毒のために早く吐精させることだけを目的に、身体を強張らせた洸の下衣を脱がす。
洸は目を閉じて、口を真一文字に結んでいる。
「触るぞ」
少しも兆していない股間をやさしく包み込むように触った。
指を巧みに動かし、彼の生理的な反応を誘う。
最初はゆっくりと、徐々に強い力で上下にしごき続ければ、徐々に身体を震わせる。
「ぁんっ」
押し殺した声を漏らし、小さくのけぞって白濁を飛ばした。
その姿を見ても、俺自身はホッとするだけで欲情することはなかった。
彼が慌ててウェットティッシュに手を伸ばし、一枚を俺に渡してくる。
「ありがとう」
自分の手を拭き「頑張ったな。お疲れ様」と声を掛け、部屋を出た。
リビングでは洋介と和樹が待ち構えていて、あっという間に出てきた俺に驚いている。
「ディンゴとしてちゃんと仕事したから、心配するな。洸も一人でゆっくり眠りたいだろうから気を遣っただけだ」
そう声を掛けると、洋介が大きく安堵の息を吐いた。
和樹がごく自然に彼の背中をさすってやる。
そして彼は俺を「お疲れ様でした」と、言葉だけでねぎらってくれた。
洸も仕事として上手くできたことに安心したようで、二回目、三回目と少しずつ身体の強張りを緩めていった。
こうして少しずつ、日常を取り戻していけるといい。
—
復帰から四回目となる本日、夕食の席で洸が和樹に話しかける。
「今日のお昼頃、秋良くんが遊びにきました。新しいディンゴと一緒に」
「あぁ、あの山男みたいなディンゴか」
俺が口を挟むと、洸がコクリと頷く。
きっと秋良は、俺と洸が無になっても離れずにいることを不思議に思い、ディンゴを伴って偵察にきたのだろう。
「秋良とは私も三日前に会いました。洸のことをずっと心配していたのですよ。彼自身は新しいディンゴに馴染み、すっかり元気になったので安堵しています」
「はい。秋良くん、僕の顔を見て安心したって言ってくれました。それから新しいディンゴは色んな話をしてくれるから楽しいって」
「そうですね。彼は博学で話し上手ですから……。余裕もあるし、秋良のことをやさしく見守ってくれるでしょう」
そう答えた和樹は、なぜか浮かない表情だ。
洋介はあからさまに溜息を吐き、俺たちに告げる。
「あのね。今夜の相談者は、秋良のディンゴだったら健一くんだよ」
「えっ」
俺も洸も、その明暗になんと返事をしたらいいのか分からず、息を呑む。
俺たちは二人揃って愛が無になったけれど、彼らは秋良だけが無になり、健一の愛は残っている。
それもさぞ辛いことだろうと、容易に想像ができた。
「秋良のことを、忘れられないそうです。だから無になりたいと申し出てきました。もう少し早く対応してやりたかったのですが、健一が「知っているバクがいい」と言うので、今日まで待ってもらっていました」
俺たちのゴタゴタに、彼も巻き込まれていたわけだ。
「秋良はこのことを知りませんし、知らせる予定もありません。それから健一は、洸と了也が無になったことを知りませんから、触れないように……」
俺と洸は深く頷き、了承を示した。
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