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[ディンゴ] 10.今後のことを決める時

朝食の席で、和樹が俺と洸に告げる。 「洸、しばらくと約束した名刺裏書の効果はここ迄です。君の望む通り、無になったバクとディンゴを無理やり一緒に過ごさせました。組織の対応として初めてのことです。明日の朝、洸と了也にそれぞれ訊きます。ここから先どうしたいのかを」 「……どうしたいって、具体的に、どういうことですか?」 小さな声で洸が問う。 「洸のディンゴを替えるのか、替えないのか、ですね」 「あぁ。もしも俺がディンゴを降りると言ったら、もしくは洸がディンゴを替えて欲しいと言ったら、俺はここから出て行かなければいけない、という訳か」 「はい。その通りです」 何となく、このままなし崩し的に俺がディンゴを続けられると思い込んでいた。 けれど組織にとって、俺は問題を起こしたディンゴなのだろう。 そしてバクの代わりはいなくとも、ディンゴの代わりはいくらでも探せるということだ。 すっかり冷たさを感じるようになった朝の空気の中を自転車で出社し、仕事をしながらも頭の片隅で問われたことを考え続けた。 従兄弟の依頼で和樹に突撃取材をし「それならバクと仕事をするチームに入りませんか?」と提案されるままにディンゴとなった。 あの時点では、物書きとして代名詞になるような本が書けたらと、潜入ルポのつもりだった。 だが途中で、従兄弟が抱えた借金が元でトラブルが起きたらしい。 借金を和樹が肩代わりすることを条件に、本を出す話は御破算となる。 その頃にはもう、洸が仕事をする姿を日々見ていて、バクを公にするべきではないと俺も気づき始めていた。 本の話が無くなった時点では、和樹に「ディンゴを辞めますか?」とは問われなかった。 俺も洸を可愛く思い始めていたし、この組織がしている仕事の面白さを感じていたから、辞めたいとも思わなかった。 今一度、よく考える。 自分は今後どうすべきなのか。 ディンゴを辞め、タウン誌の仕事も辞め、フリーランスの物書きとしてもう一度頑張ってみるという選択もあるのではないか。 そもそも、俺が続けたいと言っても、洸が違う人を希望する可能性だって大いにあるのだ。 答えは出ないまま帰宅時間となった。 奇数日の夕食に間に合うよう、すっかり陽が沈むのが早くなった暗い道に、自転車を走らせた。 — 夕食の席に和樹は居なかった。 洋介が言うには、急遽東北チームの処へ出掛けたという。 今夜の相談者は、めずらしく二人組だった。 二十代前半の双子兄弟が同じ人を好きになり、どちらかだけの恋が実るのは互いに耐えられないから、二人とも想いを無にしたいのだという。 話を聞いている限り、幼い頃からずっと一緒の、本当に仲のいい兄弟なのだろう。 タイタニックを見て、会計をした後、二人で連れ立って帰っていった。 洸は二人同時に無にしたとあって、俺が部屋に運ぶ頃にはいつもに増してぐったりとしていた。 ゆっくりとベッドに下ろしても、ウェットティッシュの箱を手に取ろうとはしない。 「大丈夫だ。もう二度と痛いことはしない」 自戒を込めて、わざわざそう口にする。 下衣を脱がし、洸のものを握り、ゆっくりしごき始めた。 苦しそうな顔に、もうすぐ楽になれるという出口を見つけたような希望が浮かぶ。 「苦しいか」 今まで何度も何度も訊いてきたことを問う。 「うん。苦しい……」 「すぐに楽にしてやるから」 「うん」 洸は目を閉じて身体の力を抜き、俺に全てを委ねた。 彼は俺の行為を、解毒するための行為を、信頼し受けてくれているのだ。 初めて会った日のように、もう何も知らない青年ではない。 急所である本来は隠したい下半身を晒し、行為の後も無防備に寝てしまう己を、俺に預けてくれている。 だから今宵、俺はそれに応えるため、責任を持って楽にしてやらなければならない。

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