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[ディンゴ] 11.よく考え結論を出す

翌朝の朝食の席にも、和樹の姿は無かった。 どうやら考える時間が少し延長されたようだ。 未だ答えが出ないことを繰り返し考えながら、玄関を出る。 前庭の桜の木は、色付いていた葉がだいぶ散り、北風が舞う。 最近は落ち葉を掃くのも、洸の仕事のようだ。 「いってらっしゃい」 竹箒を持った洸が手を振ってくれた。 「いってきます」 片手を挙げてから、自転車を漕ぎ出す。 昨日の苦しそうな顔とは一転し、晴れやかな顔をしていた。 自分が洸に対して、もう可哀そうな子だとは思っていないと改めて気がついた。 自身の特性を活かして人の役に立ちたいと、しっかり仕事をこなしている強い人間だ。 ……もしも自分がディンゴでなくなっても、きっと上手くやっていけるだろう。 夕飯に少し遅れて帰宅すると、疲れた顔をした和樹も席に座っていた。 「今朝は約束していたのに、留守にしてすみませんでした。東北でトラブルがあって出掛けていました。あちらの方面にはまだ一つのチームしか存在していないので、関東と合わせ私の管轄なのです」 「何があったの?」 洋介が心配そうに訊く。 「ディンゴがバクに……、性暴力を振るっていました。日常化していたようです」 皆が箸を止めて、和樹を見る。 「それでもバクは、他者による自分の扱いなどこういうものだと思い込んでいたらしく、自らは訴えてきませんでした。私にとっては、そのことが最もショックです。サーバルが気が付かなかったら、まだ続いていたでしょうね」 「今までもこういうことは、あったのか?」 先日自分が洸にした行為を棚に上げ、俺は訊く。 「ディンゴの人選には気を遣っているつもりですが、過去に何人かを素行不良で首にしました」 ディンゴはバクを好きになってはいけない、と事前に注意があるらしい。 けれど本当に少しの愛情も持たなかったら、バクに酷いことを平気でする者もいるだろう。 この前の俺のように……。 「それでそのバクはどうしているのですか?」 「またフェネックの力を借りることにしました。心の傷が癒えるまで預かって貰います」 溜息をつきながら、和樹は味噌汁を啜った。 食後、和樹は静かに告げる。 「洸と了也、一人ずつ私の部屋に来てもらえますか?返事を聞かせてもらいましょう。どちらからにしますか?」 洸と互いを見合ってしまう。 「僕からお願いします」 洸が名乗り出た。 その毅然とした態度に少し不安が募る。 「では」 二人が連れ立って和樹の部屋に行っている間、俺と洋介はリビングでコーヒーを飲んだ。 洋介がチラチラと俺を見てくる。 「気になるか?俺が何と答えるか」 「そりゃね。了也さんだけじゃなく、洸くんも何て答えるだろう……」 「サーバルとしては、どう思っている?」 「俺は……。俺はこのチームが好きだよ、とても。いいチームだと思っている」 「そうか」 後は二人ともただ沈黙し、洸が戻ってくるのを待った。 三十分程で洸と和樹はリビングへ戻ってきた。 「次は……」 和樹の言葉にかぶせるように、俺は喋り始める。 洋介にも決意を聞かせたくて和樹の部屋に行かず、リビングで。 「俺は続けたいよ。洸のディンゴをこのチームで。もしもまた、新しいディンゴを人選ミスしたら、洸に対して暴力を振るうような奴になるかもしれないんだろ?」 「慎重に選びます」 「いくら慎重に選んでも、その可能性が多少でもあるのならば、俺でいいじゃないか。俺も洸に酷いことをした。けれどそれを経験したからこそ反省もした。もう洸が嫌がることは絶対にしない。なぁ洸。なぁ和樹さん。俺をディンゴで居させてくれ」 二人に頭を下げる。 「よかった」 洸は小さな声で呟き、和樹も「よかったですね、洸」とホッとした声を出した。 俺が顔を上げると、洋介が涙声で「さぁ、明日からまたバシバシ働いてもらうよ」と宣言した。

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