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[ディンゴ] 14.大胆な洸の行動

翌朝。 俺が出勤するより少し早く、和樹の父親は玄関で靴を履いていた。 今日は都内の博物館で、保管されている資料を見せてもらう予約をしているのだという。 資料を見た後は、そのまま帰路に着くのだろう。 和樹の車に乗り込む時、皆に声を掛けてくれた。 「了也くん、真摯に向き合ってくれる君が洸くんのディンゴでよかった。心からそう思っています」 「貴重なお話をありがとうございました」 「洋介くん、せり鍋美味しかった。和樹のこと支えてやってくださいね。よろしく頼みますよ」 「また近いうちに、いらしてください。俺からもお声を掛けます」 「洸くん、こんな形でまた会えてうれしかったよ。元気そうで安心しました。バクの仕事、頑張って」 「頑張ります。草上さんもお元気で」 洸は車が見えなくなるまで、ずっと手を振って見送っていた。 — その晩も、いつもの流れでチームの仕事が進む。 相談者が帰り、バクを部屋へ運び解毒を手伝う。 俺の頭には和樹の父親の話がずっとあった。 再び好きになっても、また無を繰り返すという怖さ。 二度目の愛は無にならないという希望。 その二つについて、考え続ける。 少し気がそぞろだった俺を、トロンとした顔の洸が「りょ、了也さぁん」と呼ぶ。 ハっと意識を洸へ戻し「どうした?洸」と声を掛ければ、俺の腕をギュッと握ってきた。 「ねぇ、りょうや、さん。もう、もう。出ちゃう、出ちゃう、んぁっ」 酷く艶っぽく熱に浮かされたような声は、彼がスヤっと眠った後も耳にこびりついて、離れなかった。 しばらく必死に耐えていたが、結局は昂った欲望が抑えられず、自分のスウェットと下着を中途半端に下ろし、股間に手を忍ばせる。 こうしてこの部屋で、洸を見ながら欲望を処理するのは、無になった日以来、初めてのことだ。 大きくなった自分自身を握り、上下にしごく。 「洸……」 小さな声で名を呼び、彼の寝顔とさっきのイヤらしい表情を重ねた。 その時。 突然、くぐもった電子音が鳴り響く。 何の音かは分からない。 洸がモゾモゾと動き、眠そうな目を無理やりこじ開け、枕の下に手を入れスマホを取り出した。 どうやらアラームだったようだ。 洸と眼が合う。 俺は誤魔化しようがない恥ずかしい姿で、勃ち上がったものを握っている。 「すまない、洸……」 いたたまれず、思わず謝ってしまう。 洸は首を横に振り「ううん、よかった」と呟いた。 一体この状況の何がよかったのか。 「ねぇ、了也さん……。僕が、口で、してもいい?」 そう言って身体を起こし、俺のものを両手で持つ。 洸の顔が徐々に股間に近づいてきて、パクリと咥えてくれた。 「え?やっ?洸、何を……」 俺があまりに狼狽えるから、一旦口から離し「ダメだった?」と上目遣いで訊いてきた。 なんなのだろう? こんな可愛らしい仕草、誰かに習ったのだろうか。 俺は何故か少し腹立たしく思いながらも、どうしようもなく興奮してしまう。 「い、いや、ダメじゃない。ダメじゃないけれど……こんなことして、いいのか?」 コクリと頷いた洸が、再び口に含んでくれる。 先端を舐めたり、口いっぱいに頬張ったりする顔を、じっと見つめてしまう。 このまま永遠に見ていたい程、堪らない光景だった。 それでも、こんな経験は皆無であろう洸の顎は、早々に疲れてしまうのでないかと心配になり「なぁ、手も使って」と要望を伝える。 手を動かし舌を這わす、健気な姿にもう我慢ができず「洸…、洸…」と、その頭を掻き抱く。 昂って、昂って、もう出るというタイミングでもちろん口から抜き取るつもりだった。 「んっ」 けれど彼の手が思いの外、俺自身を強く握っていたから、うっかり口内へ白濁を飛ばしてしまう。 「ご、ごめんっ」 あろうことか洸は、俺が吐精したものをゴクンと飲み込んでしまった。 そして悪戯が成功したようにニコリと笑う。 「あー、もうっ。信じられない。ちょっと待ってろ」 下着とスウェットを引き上げ、部屋を出てキッチンへ行く。 冷蔵庫からミネラルウォータを出し、洸のところへ戻ろうとして洋介に見つかってしまった。 「慌ててどうしたの?」 「何でもねぇよ。あっ、洋介まさかまた盗聴器を仕掛けたのか?」 「は?了也さんに壊されてから、もうしてないよ」 「そうか、じゃぁいいんだ。悪かった」 「なにそれ。やましいことがあるの?ねぇ、洸くんに何したの?」 「俺は何もしてねぇよ」 逃げるように洸の部屋に戻った。 水を飲まそうと思っていたが、もうスヤスヤと眠っている。 それでも口をゆすいだほうがいいだろうと、声をかけた。 「洸。洸、水飲めよ」 寝ぼけた彼は「ねぇ伝わった……?」と聞いてきた。 「何が?」とは聞き返せない。 洸にはもう二度目の愛に挑む覚悟が、出来ているのだろうか。 俺のように不安に怯えてはいないのだろうか。

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