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[ディンゴ] 17.身体で情愛を伝える(完)
急にシンと静まり返ったリビングのソファから、そっと洸を抱き上げる。
洸の部屋は、洋介がエアコンを入れておいてくれたようで暖かい。
「洸……。お疲れ様」
髪を撫でると、閉じていた眼を開けてくれた。
「大成功、だったね」
「あぁ、完璧だ。もうあの彼氏に付きまとわれることもないだろう」
「よかった……お役に立てたね」
洸が嬉しそうなのが、何より嬉しかった。
「ねぇ、そこの引き出し開けてみて」
洸に言われるままにチェストの取っ手を引っ張ると、中には小さな木彫りのディンゴ人形が入っていた。
「たまたま雑貨屋さんで見つけたから。お誕生日おめでとう、了也さん」
「嬉しいよ……とても。ありがとな」
手のひらにすっぽり収まるサイズのディンゴ人形を、愛おしく眺める。
「ねぇ」「なぁ」
声が重なる。
「何?」
「洸は何を言おうとした?」
「……あのね、今日は、セックスをしてほしいなって……。大仕事したし……了也さんの誕生日だし……。了也さんは何て言おうとしたの?」
「いや、あのさ。洸は今まで、忘年会というものに参加したことがないだろうと思って。急いで出して、皆の処に行こうかって……」
二人の間にしばし沈黙が降りる。
「洸はさ、怖くないのか?またいつか無になるかもしれないことが」
「怖くないよ。僕は大丈夫」
身体が重く怠いだろうにゆっくりと手を伸ばし、俺の頬を触ってくれる。
指先から温かい熱が伝わってきた。
「どうして、どうしてそんなに強くなれた?」
「元々僕は強いよ。だって中学生の時からずっと具合が悪くて、二十才になるまで理由もわからずただ耐えていたんだもの」
「そうか、そうだな。いや、けれど……」
「僕はもう想いを口にはしないよ。ちゃんと我慢する。もしもまた無にしてしまったとしても、次も耐えてみせる。それに草上さんが、二度目の愛は無にならないかもって希望をくれたし」
「その希望は、確かなことではない」
「分かってる。ねぇ、了也さんはもう無理?繰り返したくない?僕では……ダメ?」
バクの仕事後で辛い洸に、こんなことを言わせている自分を情けなく思った。
それでも踏み止まる弱さが、自分にはある。
「この前の朝、和樹さんの部屋に呼ばれた時、僕はちゃんと言ったよ。ディンゴが了也さんじゃなくなるなら、兄の処に帰りたいですって」
思いもよらない話を聞かされ、洸の覚悟を知る。
不安は霧散してゆき、ベッドでぐったりしてる彼を抱きすくめた。
パーティ仕様で作務衣ではない洸の洋服を、全て脱がせる。
そして自分が身に着けている衣類も、乱暴に脱ぎ捨てた。
「洸、心配させて悪かった」
そう言って彼の指を、俺の形変えた股間へと導く。
身体の変化で情愛を伝える為に。
「俺も、洸とセックスしたいよ。今すぐに。でもまずは一度出して少し寝ないとな」
「うん、お願い」
「あのさ。俺もう我慢できないから、一緒にしていいか?」
向かい合って横になり、二人のものを重ね合わせ、包み込むように握った。
互いの薄い皮膚が触れ合って、ドクドクと脈を感じる。
洸の息も「はぁはぁ」と乱れ興奮しているのが分かった。
握りしめた手を、上下にゆっくり動かす。
「りょ、了也さん」
その熱の籠った声を塞ぐかのように、唇を重ねる。
下唇を食み、舌を絡ませ、口内を舐めた。
洸は息継ぎをするように「あっ、あっ」と甘い呻きを漏らし続ける。
重ね合わせたものからは、どちらがこぼしたのか分からない雫が溢れ、卑猥な音を立てている。
洸の腕が俺の背中に周り、強く抱きしめてきた。
「あっ、もう、もう、出ちゃう、あっ、りょ、了也さん」
「洸、洸、いい、あっ、一緒に、一緒に、出そう」
顔を上気させて、口を半開きにし、少しのけ反るように顎を上げるから、首筋が酷く艶っぽい。
「ぁんっ」「うっ」
洸の爪が俺の背中に喰い込み、二人分の白濁が互いの腹に飛び散った。
出したばかりのトロンとした顔が可愛らしく、触れるだけのキスで何度も唇を啄む。
疲れていたのだろう。
スヤっと眠りに入った洸の身体を、ウェットティッシュで拭いてやった。
リモコンでエアコンの温度を調整し、再びベッドに入る。
裸のまま眠る洸を、同じく裸の俺が抱きしめる。
肌と肌を合わせながら、腕の中に収まる寝顔を見て、ようやく覚悟を決めた。
愛してるとか好きだとか、そんな言葉はもう必要ない。
ただただ、洸に少しでも幸せでいてほしい。
嬉しい、楽しい、美味しい、陽の感情を一つでも多く感じてもらいたい。
もしも辛いことが起こっても、一日でも早く立ち直ってほしい。
その過程に、他の誰でもなく自分が関わりたい。
可愛い顔を、イヤらしい顔を、ずっと見ていたい。
明日から冬季休暇。
洸が眼を覚ましたら、もういいと根を上げるまで何度も何度も身体を交え、言葉を使わずに想いを伝えたい。
その為には、忘年会に行った面々が吞んだくれて帰宅し「片付けは明日にしよう」と、とっとと二階に上がってくれるといい。
[完]
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