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第6話 パッキング地獄
二人で不動産屋に入った。
「あのう、すみません。アパートを解約したいんですが……
明日の朝にはトラックが来ることになってしまって、急で申し訳ないんですが、お願いします」
「あらあ、ずいぶん急ぐんですねえ。
でも日割りの計算や部屋のチェックもしないといけないんだけど、どうします?」
「日割り計算はあとで大丈夫です。
明日の11時にアパートに来てもらえますか?待ってますので」
「はい、分かりました。鍵は明日いただきますね。
でも電気・ガス・水道はちゃんと連絡してくださいね」
「はい、分かりました。よろしくお願いします」
店を出ると、
「お前も結構演技うまいなあ」
ふたりでふっと笑った。
「さあ、準備しよう。ひもやガムテープはあるか?」
「ない」
100均で買って、スーパーやドラッグストアを回って段ボール箱をもらってきた。
二人いれば結構持てる。
「おい、今夜の飯はあるか?」
海斗はこういうところだけ気が利く。
「う~ん。ありったけ冷蔵庫の中身を使わないとまずいだろ」
「そうだな」
アパートに戻って、真っ先にご飯を炊いた。
今夜の分、明日の朝、明日の昼飯用におにぎりを作って、今夜のうちに凍らせておく。
残り野菜で具だくさんの味噌汁と野菜炒めを作った。
卵も全部使わないとやばい。途中で割れたらもったいない。
卵焼きにして、明日の朝食べればいい。
保冷剤代わりにペットボトル4本に水を入れて冷凍庫へ。
「じゃあさ、俺、本を紐かけするよ。
あ、そうだ、洗濯物はあるか?」
また海斗が気を利かせた。
「うん、洗濯機の上のかごに入ってる。すぐ洗うよ。
で、明日の朝取り込めばいいな」
ああ~なんとか俺も段取りが考えられるようになっていた。
「洗濯機って、確かホースの水を抜かないといけないんだよ」
「かもね」
海斗もよく知ってるよな。
「あ、風呂どうする?入るか?
タオルを洗濯しないといけなくなるよ」
「いいよ、手で洗って干しておこう」
「そうだな」
二人で必死に引っ越し準備をした。
電気・水道・ガスは連絡済み。
明日の朝来るらしい。
「ああ~もう俺、病みそう。どうしよう。
これからやっていけないよ。解剖だってあるんだぜ」
「いや、行かないから、俺」
「アホか。必須なんだよ」
「じゃあ、お前こそ休学すればいいだろ?」
「それは即死を意味する」
「ふっ、なんだよそれ」
「親父に首を絞められる。
俺は病院の跡取り息子なんだよ。
俺が継がないとつぶれるんだよ」
「ふ~ん、それはそれは、ご愁傷様です」
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