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第10話 AIグラス
「なるほどね。君の中身がとおる君か?」
海斗の身体になっている俺に、院長が尋ねた。
「はい、そうです。はじめまして。葉月とおると申します。
どうぞよろしくお願いします」
「それで海斗は、何が言いたいんだ?」
今度は俺の身体に向かって聞いた。
「これ以上、医学部を続けるのは無理だと思うんだよね。
だから1年休学したいんだ。彼にも負担をかけてるからさ」
「ふんふん、なるほどね」
院長は椅子に座り、しばらく考え込んだ。
そして机の引き出しから眼鏡を取り出した。
「ええっとね、休学はちょっと待ってほしい。
時間稼ぎをしてほしいんだ」
はあ??
今度は二人でちんぷんかんぷんになった。
院長は眼鏡を俺に差し出した。
「これはね、不思議なAIグラスだ。ちょっとかけてみて」
言われるままにかけてみた。
……何も変わらない。
度も入ってないし、ただの伊達眼鏡にしか見えない。
「じゃあね、それでこの本を読んでみて」
院長は医学の専門書らしき本を棚から取り出し、俺に渡した。
半信半疑でページをめくると――
ーーーーーーーなんで?
全部英語だったはずなのに、
すべて日本語に変わっている。
しかも、ところどころ赤や青で反転して強調されている。
次の瞬間、ぱっと画面が切り替わり、
内容を短くまとめた要約が表示された。
さらに<ここがポイント!>なんて吹き出しまで出てくる。
思わず眼鏡を外して院長を見た。
「ふふっ、分かったかね?
これは俺の秘密兵器だよ。予備もあるから、しばらく貸してあげる。
これで身体が戻るまではしのげるだろう。
悪いけど、海斗を助けてやってくれないかな?
報酬は十分にするよ」
海斗が口を開いた。
「父さんさ、俺、とおるに“1年休学してくれたら、卒業まで勉強のフォローをして、就職も世話する”って約束したんだ。
だから卒業したら、ここの病院の事務に採用してくれないかな?」
「ふ~ん、なるほど。いいだろう。ただし条件がある。
4年になったら医療事務の勉強をしてもらう。
卒業したら即戦力として入ってくれ。
そのためのトレーナーはこちらで用意する。
なんせ俺のコネで入るんだ。
風当たりは厳しいぞ。それでもいいのかな?」
「あ、はい。分かりました。頑張ります。ありがとうございます」
やっぱり院長は大病院のトップ。
一筋縄ではいかない。
お礼を言って病院を後にした。
「とおる、その眼鏡貸して。何だったの?」
「これね、多分、教科書や医学書を見る時に力を発揮するんだと思うよ。
まだ全然分からないけど」
海斗も眼鏡をかけてみたが、何の変化もなく、不思議そうにしていた。
「ふ~ん、そうなんだ。じゃ、早く帰ろうよ」
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