11 / 15
第11話 再度解剖の実習室で
二人で食材を買ってから、海斗のマンションに戻った。
「海斗、教科書を見せてよ」
数冊を出してくれた。
眼鏡をかけると――
「あっ! 見える……!」
「どれどれ、俺にも貸してよ」
海斗が眼鏡をかけて教科書を見た。
「えーーーー??? 何だこりゃ!」
教科書をどんどんめくりながら驚いている。
「とおる、これがあれば試験もいけるな?」
「ふふ、まだ分かんないよ。何があるか分かんないもん」
「でも海斗、解剖時間はどうするんだよ?」
「そうだった……」
俺たちはおばさんを大声で呼んだ。
「おばさーーーーん、助けてー!」
これを5回くらい叫び続けると――
天使「ほい、来た! うるさいわねえ~」
やっとおばさんが出てきた。
「おばさん、俺、解剖室で霊たちが全員俺を見て失神しちゃったんだよ。
どうしたらいい? 必須の授業なんだって」
天使「あ、あれね。ふふふ……」
「なんだよ、その笑い」
天使「ちょっと!内臓はダメよ!私だって前世で見たことないわよ。
だから逃げてたのよ。がははは!」
俺は愕然とした。くそーー!!
天使「あれはさ、向こうもびっくりしたんだよ。霊が見える人って滅多にいないからさ。
今度は教室に入る前に、外で肩に塩をかけて拝んでから入るといいよ。
そしたら見えなくなるよ」
「うん、わかったよ。ありがとう」
天使「ああ~それにしてもイケメンだねえ~。ここで拝んでいってもいいかな?」
俺の顎に手をかけて、まじまじと顔を見てくる。
これくらい、どうってことない。
「いいよ、いくらでも見てよ。その代わり、これ見て。この眼鏡すごいんだよ」
眼鏡を貸すと、おばさんはそれをかけた。
「ハイテクねぇ。前世の私はガラケーだったわよ」
海斗におばさんの発言を教えてやった。
漠然と会話を聞いていたが、何か言いたそうだ。
眼鏡を触りまくっていたおばさんが一言、
天使「あのさ、これ誰がくれたの?」
おばさん、鋭いな……。
「これは海斗の親父さんなんだ。一条総合病院の院長なんだよ。ね?」
天使「え? まさか、あそこの息子なの?」
「海斗、おばさんが驚いてるよ。“あそこの病院の息子か”って聞いてる」
「はい、そうですけど……それが何か?」
天使「あ、はあ~ん……なるほどね。
詳しくは言えないけど、大捜索網がかかってるわね」
「どういうこと?」
天使「いいからいいから。じゃね」
スーッと消えてしまった。
……何だったんだろう?
そのあと、明日の授業のあらましを海斗からレクチャーされた。
めちゃめちゃ難しいじゃん。
全部分からない。
でも眼鏡をかけて教科書を見ると――
「ああ~どうなってるんだ? ポイントが出てきたよ」
海斗がむふふふと笑った。
「とりあえずさ、これ掛けて授業に出てよ。最高じゃん」
そして翌日の解剖の時間。
塩をいっぱい持って行った。
よ~く拝んでから、ドアをそっと開けてみた。
……あら、学生の姿しか見えなかった。
ハーーーーッ。
これだけで背中に汗がたらたら流れた。
「俺さ、記録係になるね!」
海斗に教わったとおりに宣言した。
海斗は皆の会話や内容をイヤホンで聞いているはずだ。
俺の胸ポケットにはカメラと録音機が作動中。
そして無事に、解剖の実習を終えた。
外に出たら、足ががくがく震えていた。
海斗が来て、
「お前よく頑張ったな。ありがとうな」
と俺の両手を握りしめた。
ともだちにシェアしよう!

