12 / 15

第12話 うっかりポイント

 眼鏡にはWi-Fi機能があって、俺が見ている映像を海斗はスマホで確認できた。 これで授業も楽勝だろうと二人で思っていた。 ……が、そう簡単にはいかない。 俺は夕べ海斗に教わった通り、生化学の授業に出ていた。 先生が黒板に数式をどんどん書き始める。 なんだよ~、わかんねえよ。 ところが、眼鏡がさらっとポイントを提示した。 「黒板を写さなくていい」 「あとでコピーします」 そんなテロップが下に流れる。 急に気が抜けてしまい、 「おい海斗、なんで黒板写さないんだよ。ヤバいぜ」 と隣のやつに突かれた瞬間、 つい ポイントを口に出してしまった。 「え?」 グループ全員の視線が俺にくぎ付け。 しまった……余計なこと言っちまった。 後悔しても遅い。 「おい海斗、あとでよ~く教えてくれよな」 と言われ、余計な仕事を増やしてしまった。 今頃海斗は外で地団駄を踏んでいるに違いない。 申し訳ない……。 授業が終わると、逃げるように海斗の元へ走った。 案の定、睨まれた。 「どうすんだよ?」 「ごめんなさい。とりあえず弁当でも食おうよ」 とごまかした。 同居して以来、食費も家賃も払ってもらってるから、 俺はできる限り料理や掃除をしている。 もちろん弁当も毎日作る。 下手に学食に行ったら、 皆につかまって何を聞かれるか分からない。 ヤバいって。 昼食は校舎裏の誰もいない場所で二人で食べている。 お茶もコーヒーも持参。 無駄な時間を使わないためだ。 今日は午後から組織学の勉強。 「お前さ、顕微鏡の使い方は分かるか?」 「誰に聞いてる? 分かるわけないだろ」 海斗がスマホを見せながら顕微鏡の操作を説明してくれた。 「俺の頭でそれを一度に覚えろってか? 無理だろ」 「大丈夫だよ。メガネが教えてくれるからさ」 また説得され、本番で顕微鏡をのぞいた。 眼鏡が「視野のどこに異常があるか」をガイドしてくれる。 さらに海斗が 「それ炎症細胞。丸いのがリンパ球」 とテロップで説明を流してくれた。 「でもどれだよ? 全部丸いじゃんかよ~!」 そしたらまた海斗のテロップが出た。 ……なんだよ。AIより役に立つじゃん。 さすがエリート。 とりあえず疲れ果てて、海斗に支えられて帰宅した。 家に着くと、ベッドに倒れ込んだ。 海斗が水を持ってきてくれて、 「大丈夫か?」 と声をかけたあと、一言。 「炎症細胞、全部丸かったぞ!」 そのまま目を閉じて眠った。 この日は料理もできなかった。 ああ......。

ともだちにシェアしよう!