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第12話 うっかりポイント
眼鏡にはWi-Fi機能があって、俺が見ている映像を海斗はスマホで確認できた。
これで授業も楽勝だろうと二人で思っていた。
……が、そう簡単にはいかない。
俺は夕べ海斗に教わった通り、生化学の授業に出ていた。
先生が黒板に数式をどんどん書き始める。
なんだよ~、わかんねえよ。
ところが、眼鏡がさらっとポイントを提示した。
「黒板を写さなくていい」
「あとでコピーします」
そんなテロップが下に流れる。
急に気が抜けてしまい、
「おい海斗、なんで黒板写さないんだよ。ヤバいぜ」
と隣のやつに突かれた瞬間、
つい ポイントを口に出してしまった。
「え?」
グループ全員の視線が俺にくぎ付け。
しまった……余計なこと言っちまった。
後悔しても遅い。
「おい海斗、あとでよ~く教えてくれよな」
と言われ、余計な仕事を増やしてしまった。
今頃海斗は外で地団駄を踏んでいるに違いない。
申し訳ない……。
授業が終わると、逃げるように海斗の元へ走った。
案の定、睨まれた。
「どうすんだよ?」
「ごめんなさい。とりあえず弁当でも食おうよ」
とごまかした。
同居して以来、食費も家賃も払ってもらってるから、
俺はできる限り料理や掃除をしている。
もちろん弁当も毎日作る。
下手に学食に行ったら、
皆につかまって何を聞かれるか分からない。
ヤバいって。
昼食は校舎裏の誰もいない場所で二人で食べている。
お茶もコーヒーも持参。
無駄な時間を使わないためだ。
今日は午後から組織学の勉強。
「お前さ、顕微鏡の使い方は分かるか?」
「誰に聞いてる? 分かるわけないだろ」
海斗がスマホを見せながら顕微鏡の操作を説明してくれた。
「俺の頭でそれを一度に覚えろってか? 無理だろ」
「大丈夫だよ。メガネが教えてくれるからさ」
また説得され、本番で顕微鏡をのぞいた。
眼鏡が「視野のどこに異常があるか」をガイドしてくれる。
さらに海斗が
「それ炎症細胞。丸いのがリンパ球」
とテロップで説明を流してくれた。
「でもどれだよ?
全部丸いじゃんかよ~!」
そしたらまた海斗のテロップが出た。
……なんだよ。AIより役に立つじゃん。
さすがエリート。
とりあえず疲れ果てて、海斗に支えられて帰宅した。
家に着くと、ベッドに倒れ込んだ。
海斗が水を持ってきてくれて、
「大丈夫か?」
と声をかけたあと、一言。
「炎症細胞、全部丸かったぞ!」
そのまま目を閉じて眠った。
この日は料理もできなかった。
ああ......。
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