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第14話 鉄槌が首の後ろから‥‥‥
結局、俺は行かざるを得なかった。
海斗に腰をガシッと掴まれ、身体を引きずるようにして教室に入っていく。
それにしても、俺をここまで連れてきたあいつは相変わらず元気だった。
なんであんなにパワフルなんだろう。
信じられない。でも俺はオメガなんだよ。
身体が弱いんだからな。
……まあ、そんなこと誰にも言えないけど。
そういえば、ヒートが来ない。
きっと今の状況を身体が察してるんだろうなあ。
薬で抑えているとはいえ、もし今ヒートになったら知らんぞ。
あとは野となれ山となれだ。
俺は根性を出して、眼鏡の力を借りながら授業を受け、
海斗に内容を送り続けた。
あいつはこんなやり方でも勉強できるのか?
本当に頭のいい奴には敵わない。
その週はなんとか授業を終え、
週末テストもギリギリで乗り切った。
……なのに、おばさんが出てこない。
少しは俺のこと助けろよ。
一体どこをほっつき歩いてんだよ。
何気なく眼鏡をかけたまま前をぼーっと見ていると、
急にテロップが流れた。
《《 犯人確保! 重罪、50年間の生まれ変わり禁止刑 》》
なにこれ?
「海斗、なんか眼鏡にニュースが出たよ」
「はあ? どれどれ」
海斗が眼鏡をかけたが、「出てないよ」と言う。
おかしいな……確かに見えたのに。
こういう時は、おばさんを呼ぶしかない。
「おばさ~ん。出て来てよ。困ってるんだからさ」
一瞬置いて、ひょいっと現れた。
天使「あらよっと。ほれ来た」
いきなり俺の横に現れ、
天使「イケメンちゃ~ん」
両手でほっぺを挟まれ、ブチューっとキスされた。
やめろ。おばさんにキスされても嬉しくない。
「あのさ、犯人確保って眼鏡に出たんだけど、なんか知ってる?」
天使「ああ~あれね。あれはあんた達をすり替えた罪で捕まったんだよ」
「え? じゃあ俺達、元に戻れるの?」
天使「ふふ、それがねえ~、そんな簡単じゃないんだよなあ~。
あの世も人間関係が色々あってさ、大変なのよ……」
知らんし。
「じゃあさ、いつ戻れるの? 俺もう限界なんだよ」
そう言った瞬間だった。
首筋の後ろから、太い鉄槌がグサッと刺さって身体中を貫いた。
一瞬で全身が硬直し、
鉄槌に引き倒されるようにズズズーーっと床に倒れ込んだ。
身体が突っ張ったまま動かない。
呼吸も浅くなる。
俺の身体は鉄槌に支配された。
海斗が驚いて駆け寄る。
「とおる! とおる! どうした? 具合悪いのか?」
海斗が俺の上半身を抱き起こし、必死に支えてくれる。
でも身体は硬直して突っ張ったまま動けない。
「とおる、大丈夫か? ごめんよ……無理させちゃって……
俺どうしたらいいんだよ……」
海斗は俺の身体を揺らしながら、子供みたいに声を上げて泣いていた。
こんな時に限って、おばさんが消えてるし。
俺は完全に意識があった。
耳も全部聞こえている。
目は閉じているのに、情景が全部見えていた。
俺は、近くで泣いている海斗を“外側から”見ていた。
なんだろう、この感覚……。
身体は硬直して動かないのに、意識だけが浮いている。
俺の身体は誰かに乗っ取られた。
いや、誰かが入り込んだんだ。
今までに何回かこういう体験はあったが、今回は最恐だった。
ひたすら心の中で念じた。
「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……
どうか出て行ってください。
俺とあんたは関係ないだろ?
迷惑です! 早く出て行って!!」
必死で念仏を唱え続けた。
およそ2時間後——
ヤツはまた首筋の後ろから、すーっと抜けていった。
なんて迷惑なんだ。
勝手に俺の身体に入りやがって。
しかも一言の断りもない。
……もしかしたら、
俺の身体を乗っ取ろうとしたのかもしれない。
でも、海斗が泣きながら抱きしめてくれていたから、
それがすごく嬉しかった。
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