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第15話 天界の宝

 翌朝、俺は目を覚ました。 昨日のあれは何だったんだろう。 全部覚えている。 ……しかし、俺の胸に海斗の手が乗っていた。 よく見ると、俺は海斗のベッドに寝かされていて、 その腕の中で眠っていたらしい。 そうか。倒れた俺を抱きしめたまま、 ずっとそばにいてくれたんだ。 なんだか海斗が愛おしくなった。 それにしても、この顔がなあ…… もうちょっとイケてると良かったのになあと、 自分で思ってしまう。 そっと海斗の腕をどけると、海斗が目を覚ました。 「とおる、おはよう。大丈夫か? 昨日は心配したんだぞ」 そう言って、また抱きしめられた。 やめろよ…… 俺が癖になるだろ、と心の中でぼやく。 でも頬が海斗の胸にくっついていて、離れにくい。 「あのさ、今日は大学に行くのをやめて父のところに行こう。 このままだと、とおるの身体がもたない。 相談しに行こう。行けるか?」 「うん、行けるよ」 海斗となら、どこへでも行くさ。 ……そう思うものの、身体が重くて言うことをきかない。 海斗はマンションのフロントから車いすを借りてきてくれた。 車いすに乗せて、トイレにも連れて行ってくれた。 申し訳ない……。 情けないけど、俺、本当にどうしたんだろう。 それから海斗がパンを焼いて、 ポタージュスープを出してくれた。 支度をして、車で一条総合病院へ向かった。 院長室に入ると、車いすの俺を見て父さんは驚いた。 「なんだか……やられた感じだな」 やられた? どういう意味なんだろう。 「父さん、とおるの身体がもう言うことをきかないんだよ。 どうすればいいの? 休学したらダメなの?」 「それはねえ……まあ、しょうがないか」 そう言いながら、父さんは机から小さなケースを取り出した。 開けて見せると、 薄紫色の水晶のような石がついたペンダントが入っていた。 「父さん、それはなあに?」 「これをとおる君の首にかけてやりなさい。 身体が戻ると思うし、他の干渉も受けなくなるはずだ」 「他の干渉って何?」 父さんはふうっと大きくため息をついた。 「まあ、まだ言うべきではないが…… もう少しだけ時間がかかる。 それも身につけていれば乗り切れる。 やってみなさい。いいね?」 海斗がすぐにペンダントを俺の首にかけてくれた。 その薄紫色の石を手に取った瞬間、 ピカッと光った。 「え? 今光ったよね?」 「そう? 俺には見えなかったけど?」 もう、海斗は鈍いんだから……。 ふと父さんを見ると、 ふふふ、と頬が緩んでいた気がした。 そのまま帰ることになった。 この石がどれほどの効果があるのかは分からない。 まあ、お守りみたいなものなのかな。 帰り道、車でコンビニに寄った。 俺はカレーパンとカフェオレを頼んで、 海斗に買いに行ってもらった。 そのとき、やたら強い視線を感じた。 どこだ……と周囲を見回すと、 反対側の駐車場に止まっている白い車から じっと見られていた。 顔は知らない。 でも、胸騒ぎがする。 なんだろう……?

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