18 / 35
第18話 期末試験の嵐
夏休み前の医大3年生は、地獄のような科目の嵐になるらしい。
海斗がそう言うから、もう覚悟を決めるしかなかった。
どれも落とせば留年。
俺たちはさらに連係プレーを強化する必要があった。
今日は循環器内科。
レポート+筆記+口頭試問のフルセットだ。
レポートは海斗が家で必死に書いている。
筆記と口頭試問は、ほぼAI眼鏡頼り。
問題を眼鏡で見ると、
青く反転した部分が重要。
赤く反転した部分は、限りなく答えに近い。
海斗はそれを瞬時に判断して答えていく。
本当に頭の回転が速い。
俺には到底真似できない。
口頭試問は、海斗が眼鏡を通して聞き取り、
答えがテロップで流れてくる。
俺は「ええっと……」とか「うーん……」とか、
わざと間延びした声で時間を稼ぎ、
流れてきたテロップを読み上げる。
この方法で、なんとか14科目の
レポート+筆記+口頭試問をクリアした。
ただ、画像診断だけは本当に困った。
「そこのそれ……とか、右のあれ……とか、指させないから困る」
分かりやすいものはテロップで出るが、
細かい影や微妙な濃淡はお手上げだった。
それでも海斗の勘が冴えて、ギリギリ合格点をもらえた。
例の絡みつく学生たちも、試験となれば皆必死で、
人に絡む暇はないようだった。
もしかしたら、
ペンダントを服の上に出したせいかもしれない。
邪気を寄せ付けないために、あえて見えるようにした。
「とおる、今日はどこで飯食べる?」
「今日は車の中で良くねえ?」
俺たちは“しっぽを掴まれないように”、
昼飯の場所を毎回変えていた。
ある時は屋上。
ある時は物置。
ある時は車の中。
ある時は部室の裏。
嫌な気を感じる場所は即却下。
そういう場所は、大学のあちこちにあった。
危ない危ない。
そんな感じで転々とした。
俺の身体は不思議だ。
授業を受けていると、
内容がすんなり頭に入るようになっていた。
海斗が答える前に、
「あ、これ分かる」と思うことも増えていた。
俺の頭、どうなってるんだ?
多分、この薄紫色の水晶みたいな石のお陰だ。
急に頭が良くなるなんて、普通ありえない。
今日も大量の試験を受けて、
さすがに頭が疲れた。
海斗も同じだ。
「早く帰ろうぜ。帰りにスーパー寄ろうよ」
「うん、わかった」
海斗も疲れ切っていた。
スーパーに着くと、
「買い物してる間、車で寝てていいよ」
そう言って海斗は車に残った。
10分ほどして、携帯が鳴った。
「助けて……熱い……死にそうだ……車から出られない……」
俺は買い物かごを放り出し、
全力で車へ走った。
ともだちにシェアしよう!

