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第20話 海斗のマンションにて

海斗のマンションに着くと、 すぐにベッドへ寝かせ、お父さんが点滴を始めてくれた。 俺は急いでアイスコーヒーを淹れた。 「お父さん、コーヒーどうぞ」 「あぁ、すまないね」 お父さんはどこか疲れた顔をしていた。 考え込んでいるようにも見える。 「お父さん、暑いでしょう? シャワー浴びませんか?」 「そうだね。汗ばかりかいてるから、そうしようか」 コーヒーを飲み終えると、浴室へ向かった。 「お父さん、海斗の着替えですが、洗濯機の上に置いておきますね」 「ありがとうね」 俺はレンジで蒸しタオルをたくさん作った。 海斗の身体を拭いて着替えさせないと、今度は風邪を引く。 点滴中の腕を動かさないように、 慎重に服を脱がせる。 海斗はまだぐったりして眠っていた。 胸が上下するたびに、弱々しい息が漏れる。 なんでこんなことになるんだよ……。 訳が分からない。 でも、今はとにかく拭いてやるしかない。 上から下まで丁寧に汗を拭き取った。 ちょうどその頃、お父さんがシャワーを終えて出てきた。 「海斗の汗、拭いてくれたのか?」 「はい。気持ちが悪いだろうと思って……」 「ありがとう。本当に助かるよ」 「お父さん、お腹空きませんか? 何か作ります」 冷凍のそばを出し、 そばつゆには鰹節を入れて香りを出した。 茹でたそばを冷水で締め、 きゅうりの千切り、錦糸卵、トマト、刻みのり、揚げ玉、ネギを乗せる。 そばつゆを全体にかけ、わさびを添えた。 ダイニングに出すと、お父さんが目を丸くした。 「ほう……これはうまそうだ。いただきます」 冷たい麦茶も出した。 お父さんは本当においしそうに食べてくれた。 良かった。 でも、デザートがない。 果物でもあればいいけど……冷蔵庫は空っぽだ。 さっきスーパーで買おうとしたものは、 きっと戻されてしまっただろう。 仕方ない。お父さんに頼んだ。 「お父さん、ちょっとコンビニ行ってきます。 海斗を見てていただけますか?」 「ああ、いいよ」 海斗を一人にできないから、急いで買い物へ走った。 コンビニでは手当たり次第にかごに放り込み、たくさん買い込む。 次はいつ来られるか分からない。 急いでマンションに戻ると、 お父さんはソファでうたた寝していた。 海斗を見ると、点滴はまだ少し残っている。 そっと買い物を片付け、 果物をお父さんに出した。 ……あとは、どうしたらいいんだろう。 途方に暮れた。 海斗の寝顔を見つめる。 胸がぎゅっと痛む。 もう普通の生活なんてできる気がしない。 何かに追い詰められている。 逃げ場がない。 これからどうすればいいんだろう。 不安が押し寄せて、また涙が滲んだ。 海斗の手を握った。 海斗……早く治ってよ。

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